オーナーのプロジェクトマネジメント【第19回】

前回に引き続き検証ステージについて記載するが、今回はクオリフィケーションを主体に記載する。
 
参考 以前に記載した記事の目次
 1.  はじめに
 2.  プロジェクトステージの概要
 3.  何をマネジメントするか
 4.  プロジェクト計画に関連する主要な問題点
 5.  プロジェクトマネジャーの役割と責務
 6.  プロジェクトマネジャーの資質
 7.  プロジェクトで使用することば
 8.  外部への依頼範囲
 9-10. FS(Feasibility Study)ステージ
11-13. 基本計画(概念設計)ステージ
14-16. 基本設計ステージ
 17. 発注方式
 18-19. 詳細設計ステージ
 20-21. 製作・施工ステージ
 22. 検証ステージ【その1】

23. 検証ステージ【その2】
(1)クオリフィケーション全般
 医薬品製造においてはバリデーションが必要であるが、バリデーションの中でも医薬品製造設備の建設段階(または改造後)における検証をクオリフィケーション(Qualification)といい、DQ、IQ、OQ、PQといったクオリフィケーションが必要となる。プロジェクトにおいて、クオリフィケーションのアプローチは以下が考えられる。どのアプローチを採用するかは、プロジェクトの規模や種類、プロジェクトメンバーの理解度などによるであろう。
・クオリフィケーションを単独で行う旧来のアプローチ
・コミッショニングの内、クオリフィケーションと同じ部分については、
 コミッショニングと重複しないようにコミッショニングの結果を参照して、
 クオリフィケーションとするアプローチ(ISPE Baseline Guide Vol.5
 「コミッショニングおよびクオリフィケーション」)
・クオリフィケーションをコミッショニングと総合的に実施するベリフィ
 ケーションというアプローチ(ISPE Guide「科学およびリスクに基づく
 施設・システム
・設備/機器の導入に関するアプローチ」)
 
 いずれのアプローチを採用しても、クオリフィケーションそのものの基本は同じであることから、基本的事項について記載する。
 
 クオリフィケーションとは、医薬品品質に影響するようなシステム・施設・設備・装置・機器など(クリティカルアスペクトまたはダイレクト・インパクト・システム)について、仕様・設計どおりであるかの検証を行うことである。すなわち、システム・施設・設備・装置・機器などが適切に据付けられ、正しく作動し、実際に期待される結果(意図した用途への適合性)が得られることを検証し、文書化することである。ただし、その他の医薬品品質に影響しない部分についてはGEP(Good Engineering Practice)に従って実施されていなければならない。すなわち、プロジェクト全体はGEPに従って実施されていれば、クリティカルアスペクトなどの医薬品品質に影響する部分についてだけをクオリフィケーションすればよいことになる。
 基本的にはすべてのクオリフィケーションにおいては、プロトコルを作成し、それにそって実施し、その結果を評価することになるので、プロトコルの作成は、検証ステージ以前に実施される。検証ステージでは、DQを除くクオリフィケーション、すなわちIQ、OQ、PQを実施する。クオリフィケーションにおいては、すべて文書化し、それはGDP(Good Documentation Practice)に従わなければならない。結果に逸脱があれば是正処置を行い、全て文書化する必要がある。また、是正処置が完結するまでは、関連システムの次のクオリフィケーションの実施には入れない。例えば、あるシステムのIQが逸脱しており是正処置が完結するまでは、そのシステムのOQの実施はできないことになる。
 また個々の手順などは、事前に作成された手順書・要領書に従わなければならない。後から辻褄合わせに作成なり変更することは認められていない。前述の3つのアプローチを実施するための条件については本稿では省略する。
 設備建設プロジェクトでは、OQまたはPQまでを実施する場合が多いが、本稿ではPQの後に実施されるPV(プロセスバリデーション)についても少し触れることとした。

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