業界雑感 2017年3月

2017/04/06 その他

本年2月、後発医薬品368品目が承認された。この中でオーソライズド・ジェネリック(AG)としてこれまでで最多となる10成分(配合剤も1成分としてカウント)25品目が承認された。 特に第一三共エスファが承認を受けた7成分21品目のうち、「オルメテック」「レザルタス」「グレースビット」のAGは先発メーカーが親会社である第一三共なので、さもありなんといったところだが、アステラス製薬と日本ベーリンガーインゲルハイムの「ミカルディス」「ミカムロ」「ミコンビ」の三品目および塩野義製薬とアストラゼネカの「クレストール」のAGまでも同社が承認を得たことは注目である。

一昨年あたりから、「オーソライズド・ジェネリックは台風の眼になるか?」としてセミナーや講演で話をしてきたことがいよいよ現実味を帯びてきたともいえる。 もともと、新薬特化型のビジネス戦略を展開してきたアステラス製薬や塩野義製薬としては関係会社や系列会社にジェネリックメーカーを持っておらず、AGに対応するためにはどこかのジェネリックメーカーに導出するしかなかった。昨年夏に報道された長期収載品の承継・譲渡というスキームでは一時金のやりとりで終わってしまうが、大型製品のAGであれば、先発長期収載品としての自社の売れ上げも一定水準確保しつつ、導出したAGからはロイヤリティが得られる。サプライサイドから見ると、先発長期収載品とAGを合わせれば同製品で一定のシェアが維持できるので、物量減に伴う製造原価の急激な高騰はある程度抑えられるだけでなく、添加剤も含めて同じ原料、同じ製造方法での製造だから在庫のコントロールなども容易ということになり、ビジネスモデルとしては「十分あり」といえる。アステラス製薬は2020年頃までに「ボノテオ」「シムビコート」「セレコックス」「ベシケア」と大型製品の特許切れを迎えることになり、これらのAGがどういった形で取り扱われるのか、興味深いところである。

同時に承認された「ムコスタ」(大塚製薬)のAGは関係会社の大塚製薬工場が承認を取得している一方で、今年6月に特許が切れる「エビリファイ」にはAGが見当たらず、ジェネリックメーカー10社以上が後発薬としての承認を取得している。先発長期収載品のみのビジネスとして勝負したほうが有利とみたのか、AG申請にあたって関係会社間で調整がつかなかったのか、いろいろな憶測ができ今後注目といったところか。

いずれにしても、これまで承認・発売されてきたAGはそのほとんどが先発薬メーカーの子会社や関係会社との連携によるもので、このビジネスモデルが確立してしまうと、ジェネリックメーカーとしては後発品比率80%達成を前に完全に梯子を外される形になってしまう。一昨年9月の医薬品産業強化総合戦略の中ではジェネリックメーカーの集約化・大型化が必要としているが、AGの動向がその鍵を握っているのかもしれない。

※この記事は「村田兼一コンサルティング株式会社HP」の記事を転載したものです。

執筆者について

村田 兼一

経歴 村田兼一コンサルティング株式会社代表取締役。
1978年藤沢薬品工業(現アステラス製薬)入社。注射剤製造、無菌バリデーション技術開発、FDA対応、基幹システム(SAP)開発等に従事後、生産本部にて中期戦略企画、工場分社化推進・合併準備委員会に携わる。合併後のアステラス製薬では、戦略企画の後、製造委受託の推進を担当する。
2012年に退社し、村田兼一コンサルティング株式会社設立。工場の原価をはじめとする計数マネジメントを中心に、SAP開発を含むサプライチェーン全般の管理・改善を専門とする。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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