最新コスメ科学 解体新書【第19回】

ピッカリング エマルション① 粉で油を乳化する?

 化粧品会社に入って初めての研究所の報告会で、「粉体乳化」という言葉を聞きました。普通、水の中に油を分散したエマルションを作る時には、石けんのような界面活性剤を使って水と油が接する界面を安定化するのですが、この系では、いわゆる活性剤は使わずに、酸化チタンや酸化鉄によって界面を安定化することで、ファンデーションなどのメイクアップ化粧料を調製することができる、というのです。

 発表をされていたベテラン研究員のKさん、当たり前のことのようにこの現象について話されていたのですが、私は「へーーーー!」と思って、感動しました。界面活性剤も両親媒性高分子も使わずにエマルションを安定化して、さらにそれを商品にも応用されている、ということは、まさに界面化学の教科書に書かれている常識を覆す、画期的なテクノロジーのように思われたのです。

 ちょっと気になって調べてみたところ、このような固体粒子を用いてエマルションが安定化される現象は20世紀の初めに何人かの研究者によって報告されており、これらの先駆者のひとりに敬意を表して「ピッカリング エマルション」と名づけられたのでした [1]。そして、一般的な水となじみやすい親水性の固体粒子は水相中に、油となじみやすい親油性の固体粒子は油相中に分散するが、水と油の両方に適度な濡れ性と親和性を持つ場合は水相と油相の接する界面に吸着して、エマルションを安定化することができるのでした [2]。

 

 

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