Q&A:欧州医療機器規則 (MDR) に関する医療機器メーカーのFAQ【前編】

記事投稿:マスターコントロール株式会社

欧州の医療機器指令(Medical Devices Directive:以下、MDD)及び体外診断用医療機器指令(In Vitro Diagnostic Directive:以下、 IVDD)は、それぞれの移行期間を経て、医療機器規則(Medical Device Regulation:以下、MDR)及び体外診断用医療機器規則(In Vitro Diagnostic Regulation:以下、IVDR)へと、新たに置き換えられます。MDRは2021年5月26日、IVDRは2024年5月26日が適用日となるため、それまでに認証を取得する必要があります。新規制は、医療機器の承認及び使用に関する透明性と厳格性を高めること、同時に患者への安全性とアウトカムを改善することを目的としています。
新規制の下、医療機器及び体外診断用医療機器は、設定された期限までにCEマーク(EUの基準適合マーク)認証を取得する必要があり、世界中の医療機器メーカーは、自社医療機器のコンプライアンス対応について、より深い洞察と情報を求めています。  
フランスに本拠を置くライフサイエンス領域の品質及びコンプライアンスに関するコンサルタント企業であり、MasterControlのVARパートナーであるApsalys社は、MDR/IVDRを取り巻く諸問題の明確化を図り、先般MasterControl Inc.(マスターコントロール米国法人)の本分領域エキスパートであるAlex Butler氏、Bryant Headley氏とQ&Aを実施しました。
 

Q: MDRの重要な変更点は、何ですか?

Butler氏:MDRはMDDの4倍の長さとなりますが、「Safety(安全性)」という言葉がMDDでは40回ほど使用されているのに対し、MDRでは290回にも及び登場します。このことから、MDRが広範さとより細部までを網羅した規制であるということがご想像いただけると思いますので、それに伴う大幅な変化もご理解いただけるはずです。私が関心を寄せている主な変更点は、大半の企業が規制対象製品を新しい規格に準拠させ、同等性の規格に関するより厳格なガイダンスに従い、多くのクリニカル・エビデンスを提示する必要があるということです。これらは良い変更であり、業界はその対応に苦戦していますが、より良い安全基準と性能基準を後押しできると思います。
Headle氏:MDRが医療機器製造業者に影響を及ぼしている分野としては、機器固有識別子(Unique Device Indicator:以下、UDI)システムの導入、安全性と性能に関する一般要求事項、技術文書、クラス分類に関するルール、適合性評価手順、及び臨床調査が挙げられます。また、市販前および市販後の規制要求事項の増加している一方、リスク管理に関する要求事項は若干抑えられていたり、新規第三者認証機関(NB)認定の義務や品質管理システム(QMS)適合性に関する新規条件が生じています。こうしたMDRに伴う変更事項を押さえることが重要となるのは間違いありません。
 

Q: MDRの下、臨床評価報告書 (CER) には、より厳格な第三者認証機関 (NB) 要求事項はありますか?

Butler氏: はい、あります。各製造業者の製品を更新するには長いプロセスが必要となります。新規要求事項を満たすためには、現行CERと計画書におけるギャップ評価を実施する必要があります。CERの作成者は、開発、臨床、規制、市販後など、多くの分野に精通していることが求められます。MDRでは、1つの分野に精通している個人または部門ごとにサイロ化された報告内容では不十分であり、CERでは全体の構成がすべて関連していることが求められます。
Headley氏: また、過去にNBによって承認された文書は通用しません。技術文書のレベルが上がり始めており、NBは、MDDの下で要求されていた内容よりも、はるかに詳細な内容を求めています。 欧州委員会は、2019年末までにはMDR指定のNBの数が20に達すると予想していますが、MDRに対する医療機器の再認証に指定されているNBは現在5~6社にすぎないため、すでにこの影響が確認されています。NBの潜在的な不足は、今後も注視すべき事項です。

 

Q: 医療機器の同等性に関する要求事項の観点から、MDRによってもたらされた変更内容は認められますか?

Butler氏: 同等性に関しては、はるかに厳しいガイドラインが存在します。製品をより迅速に上市させる目的で、過去には、クリニカル・エビデンスによる裏付けを伴わない同等性が誤用されていました。これによって、患者や顧客に対する医療機器の安全性及び有効性の観点に、破壊的な結果がもたらされたことがあります。MDRの下では、競合他社の臨床データを利用することは、ほぼ不可能となります。
Headley氏: MDDでは同等性に関する要求事項が明確に定義されていなかったため、MDRでは、製造業者により提供される臨床データは同等または類似医療機器でなければならないことが明示されています。また、クリニカル・エビデンスとして使用する同等品の評価に対しても、新規制では明確な基準が特定されています。MDRのAnnex XIVのSection 3 では、製造業者が同等性を主張する医療機器では、同じ技術特性、生物学的特性及び臨床的特性を共有する必要性が要求されています。従って、より膨大なエビデンスの提出が必要となります。また、概して、CEマーキングを取得していない医療機器は、MDRの下では同等品として認められません。

本記事は掲載企業による連載企画の前編です。後編をご覧になりたい方は、こちらをクリックしてください。​
 

 

著者のご紹介
Mike Regart
MasterControl Inc.のContent Marketing Specialistであり、GxP Lifelineブログの編集者も務め、特集雑誌の記事から業界のホワイトペーパー、テクニカルプロダクトドキュメント、プレスリリース、ブログ投稿まで、幅広い種類のコンテンツを執筆しています。テクノロジー業界、ニュースメディア、高等教育向けのマーケティング及びジャーナリズムコンテンツの作成に10年半近い経験を有しており、Brigham Young Universityから国際関係を重視した政治学の学士号を取得しています。


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