再生医療等製品の品質保証についての雑感【第37回】

細胞製造の運用設計 (1) ~ 自動化(機械操作)導入の費用対効果 その1

はじめに

 筆者は、紀ノ岡研究室にける活動の1つで、細胞加工製品の製造コスト評価を行っています。その中で、工程における細胞加工作業の機械化に必要なコストに関する研究課題について、当時大学院生だった中島健太郎氏と一緒に行ったのですが、その論文が2022年3月、Regenerative Therapy誌に掲載されました。せっかくですので、日本語での解説を兼ね、細胞加工製品の製造を機械化することの意義とその費用対効果の考え方について、雑感を述べさせていただくネタとして使わせていただきます。機械化の工程設計に関しては、第7回(再生医療等製品製造の再現性と工程操作の機械化)をご参照いただければと存じます。
 今回は、先ず論文の結論から議論を開始し、次回に詳細を議論させていただきます。留意いただきたい点としては、筆者は、将来的に細胞加工の機械化は不可避であると考えております。だからこそですが、細胞加工を機械化することの難しさや、限定的な適用範囲を前面に出したお話しをします。


● 細胞加工に関わる工程の作業構造解析と細胞加工操作の機械化における機械の役割
 細胞加工製品の製造は、上流工程では、細胞培養(増幅・分化誘導)の変化(培養プロセス)に伴う、ほとんどの時間(工数)がインキュベータ内で維持された状態となりますが、その間は、装置(インキュベータ)が自動的に温調やガス濃度を調整しており、機械化および省人化を達成していると認識します。すなわち、細胞培養に関わる工程は、ほとんどの時間(工数)において、既に機械化かつ省人化を達成しており、ここで求められている機械化の対象は、培地交換や継代(環境調整等に関わる一時的な変動)に関わるような、無菌操作等区域(CPZ: cell processing zone)内での一定時間毎の作業のみとしました。具体的に、本報の検討では、高度な教育訓練によりスキルを維持する作業者に代わり、安定して再現性よく細胞加工操作を実施可能な、ロボットによる作業に置き換えることが対象です。他方、汚染源でありかつ高度な更衣管理とともに入室を要する作業者を完全に省くことを目的とするのは、培養容器あるいは工程資材・培地等の自動搬送など、細胞加工操作の機械化ではなく、搬送作業(物流)の「省人化」であるため、本報の(手操作と同等以上の品質実現で置き換える)機械化には含めてはいません。ただし費用対効果の考察は可能ですので、次回にてお話ししたいと考えています。
 本報における検討では、現状で一般的なCPZ(グレードA)での開放操作を伴う細胞加工手順をモデルに、高度な細胞加工スキルを有する作業者を機械(ロボットアーム)に変更することに限定し、製品当たりの細胞加工操作に関わる必要なコストについて、リソース(投資)ベースで計算し、手操作vs.機械で評価を行いました。手操作あるいは機械操作の構成は、図1に示すように、細胞加工スキルを有する作業者2名で行う「手操作」の工程作業について、ロボットアーム1組と細胞加工スキルを有さない作業者(無菌操作スキルのみ)1名の「機械操作」に置き換えることで、それぞれの工程作業に必要な、初期費用(教育訓練費用・設計費用・機械製作費など)、運用費用(労務費、水光熱費)、および維持費用(定期点検、修繕費など)を合算し、10年間のライフサイクルコスティングにより、製品当たりの単価を算出しました。このとき特筆すべき点としては、細胞加工のスキルを有する作業者Bが、安定かつ再現性よく細胞加工を実施できるための教育訓練費(時間)は、作業者が必ずしも10年間雇用を継続できないことを前提に、10年間で要求される実労働時間に必要な雇用人数に対して積み上げています。

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