薬づくりの実務担当者として実践したいこと【第2回・最終回】

2016/11/16 製剤

3. 作業方法について
 作業方法については多くのSOPを作成し、教育を行い、作業手順を遵守して日々の業務が進められるが、作業員一人ひとりの技量も重要と考える。特に注射剤の製造に関しては目に見えない微生物、エンドトキシン、微小な異物を混入させないために細心の注意が必要である。ここでは主に注射剤の製造において、製品の汚染防止、異種品の混入防止のために配慮したい点を述べる。

 ① 汚染(微生物、エンドトキシン、異物)の防止
・設備機器に関する項でも記載した通り、定期的なオーバーホール後の設備の再立ち上げ時は、設備機器の清浄化や運転確認と同時に、製造エリア全体の汚染がない事を生産再開時の作業手順を踏まえて十分確認しておきたい。
・無菌室内では人が最大の微生物汚染源と言っても過言ではない。高グレードエリアに汚染を持ち込まないために、作業者に対する適格性調査の実施、更衣手順の遵守は言うまでもないが、滅菌済みガウンやグローブ着用時にその外面が身体や周囲に触れないよう細心の注意を払うような指導も必要である。
・「無菌操作法による無菌医薬品の製造に関する指針」には、職員の教育訓練のうち「無菌操作技術面」として以下の様に記載されている。
 
・ 無菌操作区域において作業に従事する者は、不必要な動作及び重要な表面との直接の接触を避けること。
・ 粒子を発生させたり、気流を乱すおそれの可能性のある不必要な動作及び会話を避けること。
・ 開放容器又は露出している製品若しくは資材(ゴム栓等)にあたる気流の上流を遮断すること、横切ること等の動作は避けること。
・ 重要区域において、無菌の製品又は資材の表面にあたる気流を遮断しないこと。
・ 着用した手袋については、頻繁に消毒する等により、清浄に保つこと。
 
作業員の直接介入から隔離された無菌操作区域を有するアイソレーターシステムとは異なる従来型のクリーンブースでの作業では、早過ぎる動作、床面に近い低い姿勢での作業は避ける必要がある。気流調査結果を理解し、これを意識した動作を行う事なども無菌操作に関する教育に盛り込みたい。
・高グレードエリアで直接容器(バイアル、アンプルなど)が破損した場合は、破片や薬剤による汚染、その後のライン上の処置に伴う汚染のないように、状況に応じて処置の範囲や方法を規定しておくと良い。破損が発生しない安定したハンドリングが可能となるよう、技術部門を巻き込んだ改善活動も大切である。
・作業エリア毎に清掃頻度や方法が規定されていても、手順が悪ければ清掃によって汚染を拡散させてしまいかねない。また、清掃用具の管理方法が適切でなければ微生物の汚染源になってしまう。さらに、清掃用具は異物の発生源にもなり得る。清掃手順、清掃用具の選定と管理方法(滅菌等による劣化に伴う異物発生状況の調査なども含めて)は慎重に決定しておきたい。
 微生物や異物を清浄エリアに持ち込まず、清浄エリア内で発生させず、製品に混入させない工夫をする事が大切である。
・ある書籍で「濡れた長いゴムチューブを渦巻き状に保管していたら、GMP査察の際に指摘を受けた」との事例が紹介されていた。内部に水が溜った状態での保管は、微生物、エンドトキシン(グラム陰性菌由来)の増加に繋がる可能性があるため避けなければならない。

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執筆者について

伊藤 二三男

経歴 1971年武田薬品工業入社、注射剤製造およびバリデーションを担当。その後、製造委託先への監査や変更管理・逸脱処理等のGMP関連業務、また、注射剤・ワクチン(プレフィルドシリンジ、バイアル)製造に関する教育訓練指導も担当する。この間、国内GMP適合性調査、海外当局による査察への対応・支援にも携わる。 ※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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