GCP入門【第5回】

GCP省令の改正履歴
前回は、毎年のように一部改正が行われているGCP省令とその関連通知の変遷の10年ほどを見た。今回はさらにその後の変遷を追ってみたい。

7)    平成20年2月29日、厚生労働省令第24号
 平成19年2月より、治験に関する制度の見直しが「治験のあり方に関する検討会」で開始された。ここでICH-GCPと我が国のGCPとの相違点やその他の円滑に治験を実施するために必要な事項について検討が行われ、同年9月に報告書がとりまとめられた。この報告を受けた一部改正である。なお、平成19年10月に「治験に係る文書又は記録について」が通知されたことを前回述べたが、これも上記報告を受けての流れの一環である。
 GCP省令の一部改正に話を戻すと、具体的には、趣旨(第1条)に「被験者の人権の保護、安全の保持及び福祉の向上を図り、治験の科学的な質及び成績の信頼性を確保するため」という文言を追記したほか、運搬業者を介した治験薬の交付を認めたことや、治験中の安全性情報の医療機関への伝達方法が変更されたことや、実地医療機関ごとに一の治験審査委員会を設置しなければならないという原則を廃止したことなど、比較的多くの改正が盛り込まれた。
 このように一部改正とはいえインパクトの大きい改正の場合は運用通知も改正されることを前回紹介した。今回も、平成20年10月1日に審査管理課長から「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」の運用について通知されている。
 この改正で治験審査委員会(IRB)の設置に関する原則が変わった。そもそもIRBとは何なのか、日本のIRBと諸外国とはどう違うのか、等々、GCPの4本柱の1つだと云われていることを紹介したIRBに関して触れることにする。

治験審査委員会(IRB)
 平成20年2月のGCP改正で治験審査委員会(IRB)の設置に関する原則が大きく変わった。ICH-GCPでは”Institutional Review Board/Independent Ethics Committee (IRB/IEC)”と記載されており、直訳するならば「施設内審査委員会(IRB)/独立倫理委員会(IEC)」というところであろうか。これを我が国では「治験審査委員会」と呼び、一般的に”IRB”と略して読んでいる。その役割については「GCP入門【第2回】」で紹介した。
 ICH-GCPではなぜIRBとIECという2つの書き方をしているかというと、ざっくりした言い方をするならば米国ではIRBであり、欧州ではIECと呼んでいるからということになる。米国ではこのような委員会は各医療機関内に設置されていることが多いので、医療機関すなわち、施設内審査委員会と呼んでいる。一方欧州では国によって呼び方も設置方法も多少は異なってはいるものの、医療機関内に設置されるよりは地域(国、市、医師会等)で設置されていることが多いようである。
 日本では旧GCPの時代を含め、当初は「実施医療機関ごとに一の治験審査委員会を設置しなければならない」ということを原則としていたことから、いわゆる施設内に設置するという意味で米国と同様のIRBという呼び方をしている。ところが上述のように平成20年2月のGCP改正によってこの原則は廃止され、治験審査委員会の設置者は医療機関の長に限定せずに、さらに自施設に治験審査委員会が設置されているか否かを問わず、どこの治験審査委員会を選択しても良いこととなった。したがって施設内に無くても良いのだが、過去を踏襲してIRBという略称を使い続けている。
 なお、米国のIRB(施設内審査委員会)は臨床試験の審査を行うが、日本のIRB(治験審査委員会)は治験に限定した審査を行う。これに関しては、「GCP入門【第3回】」の答申GCPのところで触れたとおり、ICH-GCPを薬事法に基づく国内規制に取り入れるために、医薬品の承認申請資料に用いるために実施される臨床試験、すなわち治験に限定したことによるものである。

執筆者について

経歴 ※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

連載記事

コメント

コメント

投稿者名必須

投稿者名を入力してください

コメント必須

コメントを入力してください

セミナー

eラーニング

書籍

CM Plusサービス一覧

※CM Plusホームページにリンクされます

関連サイト

※関連サイトにリンクされます