実践! 医薬品開発のプロジェクトマネジメント【第5回】

 前回に引き続き、医薬品開発において最も難しいと言われている「意思決定」について取り上げる。恣意的な意思決定を排除してより客観的な意思決定をすべきことを述べたが、今回は、ポートフォリオ分析、優先順位付け、組織対応などについて紹介する。

 前回、Go/No Go判断の意思決定のための具体的な手順は下記のようになることを示した。
 ① 各権威者が持っている価値判断の基準や論点を確認する
 ② 意思決定項目を確認し、その前提条件を共有化する
 ③ デシジョン・ストラクチャー(フィシュボーン・ストラクチャー)を作成する
 ④ インフルエンス・ダイアグラムを作成する
 ⑤ 開発ハードルを確認し、その程度を決定する
 ⑥ 予測を行う
   市場推移、上市時の競合状況、マーケットシェア、プロダクトライフ
   サイクル、薬価、製造原価、設備投資額、市場導入費、必要に応じ導出条件
 ⑦ 分析を行う
   Base case分析、感度分析(トルネード・チャート)、プロダクトサイクル
   分析、感度分析結果からデシジョン・ツリー(ストラクチャー)を再構成、
   確率分布曲線、デシジョン・ツリー上での期待事業価値、期待事業価値と
   プロダクティビティ(投資効率)
 
 実は、最近の科学の進歩で、創薬段階での意思決定がさらに厳密にできそうである。たとえば、iPS細胞を使ったり、疾患関連の遺伝子情報に基づいたりした研究開発がこれから本格的に始まる。これにより、開発候補品の細胞レベルでの薬理、局在、代謝、毒性が分かるので、GLP試験や臨床試験に入るずっと前の段階でGo/No Go判断ができるという時代になってくる。すなわち、投資が少ない段階での意思決定ができるようになり、将来、効率的な医薬品開発が進むものと予想される。
 これで個々の開発候補品・開発品の分析や事業性評価を終えるが、Go/No Go判断をする際には、過去にリソースをどれだけ使ったかがよく議論になる。検討すべきは、将来にどれだけのリソースを使うことになるのか、そして、その投資がどれだけの事業価値を生むかである。過去の支出を回収しようという意図的な考えに固執するあまり、意思決定の機会を逃してしまう場合が往々にしてあった。
 
 個々の検討が終わった後、すべての開発候補品・開発品を対象にポートフォリオ分析を行ない、優先順位付けをする。ポートフォリオ分析では、市場成長率×市場占有率(マーケットシェア)、市場性×成功確率、重要度×満足度などの指標を用いる。プロジェクトの優先順位は、投資効率、期待事業価値、開発費、要員、上市時期などの要因を考慮して総合的に決定される。これにより、リソース(ヒト、モノ、カネ、情報)の傾斜配分をすることが可能となる。優先順位付けは、少なくとも年に一回、できれば半年に一回実施し、A・B・Cの三つのランクに分けるのが実用的である。
  1. 医薬品開発に掛かる時間をリソースでできうる限り買い取る、という考え方で最優先に投資する
  2. 優先順位を「A」より下げるものの適切に投資する
    このランクに属するものは多いが、必要に応じそれらをリソース配分という観点からさらに分類する
  3. 一時的に凍結する。あるいは、ライセンスやアライアンスなどによる導出を考える

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