医薬原薬の製造【第10回】

10 環境への溶媒排出抑制
 

10-1 溶媒の回収

環境への排出基準を考えて見ましょう。公共水域への排出規制は塩素系溶媒+ベンゼン、ジオキサンではかなり厳しいですが、大気への放出は、大気汚染防止法で規定された指定物質(ベンゼン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン)以外規制濃度はありません。労働安全衛生法で職場環境の管理濃度が規定されていますが、大気への放出については、かなり緩いと言えるでしょう。排出量の多い、印刷業界、塗装業界では、規制を厳しくすると、業界自体が成り立たないということもあると思われます。しかし、環境への溶媒の放出は、規制を守っていればどれほど放出しても良いというものではありません。企業として環境を守るために常に環境への排出を削減することが社会から求められている時代になっています。事実、大気汚染防止法では、優先取組物質23物質、有害大気汚染物質に該当する可能性がある物質248物質で自主的排出抑制努力義務がありますし、原薬工場で使用されるほとんどの溶媒が23+248物質の中に含まれています。
 

さて、排出削減をするとは言っても工場内には、大気や公共水域へ溶媒が排出されている場所が何カ所もあります。どこから削減した良いのかをまず考えなければいけません。一方、化審法やPRTR法では、溶媒の大気および公共水域への排出量の届出が求められています。原薬・中間体工場で使われているほとんどの溶媒について排出量報告義務があると言っても過言ではありません。以下の溶媒排出基準表を確認してみてください。排出量の数字を正確に出すためには、工場の各工程のどこから、どの溶媒がどの位、大気もしくは公共水域へ排出しているのかを求める必要があります。つまり溶媒のマスバランスを作っておかなければいけないということです。溶媒のマスバランス作成は面倒な作業ですが、法律遵守のためにはやらなければいけないですし、また、溶媒の使用量削減、原薬の比例費削減の見地からも非常に重要な情報となります。原薬工場で、大気もしくは公共水域へ流している溶媒を回収するのは、法令遵守の観点から重要ですが、設備投資が小さい対策であれば比例費削減にもつながります。
 

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