業界雑感 2017年12月

2018/01/28 その他

 2013年6月に医薬品産業ビジョン2013が策定、公表されてから4年半が経過した。2002年、2007年と過去2回公表された医薬品産業ビジョンではいずれも、日本のトップ企業はグローバルメガファーマを目指せとハッパをかけられてきたのだったが、2013年のビジョンでは唐突な感じで「勝ちパターンのビジネスモデル」を自ら作り上げ、すべての製薬企業がその規模に関わらず、それぞれ特徴を活かした企業にならなければ生き残れない状況にある、とされ「適者生存」がそのキーワードに掲げられたのである。同時期に策定された「日本再興戦略」では、健康長寿産業が戦略的分野の1つに位置づけられ、医薬品産業の活性化を通じて、我が国の経済全体の成長への寄与が期待されていたはずなのだが。

 ここ数年の医薬品市場の動向を振り返ってみると、ジェネリック医薬品の使用促進策により、ジェネリックメーカー各社は大きく売り上げを伸ばし、生産能力確保のための大型設備投資もされてきている。ところがオーソライズドジェネリックの登場により、ジェネリック大手の直近の売上高の伸びには急ブレーキがかかっており、冷や水を浴びせた形になった。米国や東南アジアへの進出を目指したM&Aや新規投資も活発に行われるようになってきた背景には、後発品比率80%達成後のジェネリックメーカー各社の更なる成長戦略に向けた布石とも思える。新薬メーカーはといえば、「ソバルディ」「ハーボニー」や「オプジーボ」といった画期的新薬の発売で大きく売り上げを伸ばすメーカーが出てくる一方で、低分子医薬品の新規開発には手詰まり感が漂い、新規開発はバイオ医薬品に集中している。後発医薬品使用拡大により売上高が急減してきている長期収載品を切り離す動きが拡がっており、製品ポートフォリオの再編やサプライチェーンの再構築が始まっている。2005年薬事法改正により全面委託が可能となって以来大きく成長したCMO業界についても、受託品の主力であった長期収載品の物量が急減している中で、より付加価値の高いビジネスモデルを指向してCDMOへの脱皮や高活性医薬品の受託など、それぞれの戦略を選択しようとしている。

 日本の65歳以上(高齢者)の人口は2017年9月15日時点で3514万人となり、総人口比は27.7%という超高齢化社会の中で、社会保障費は今後も増え続ける。12月20日の中医協総会で了承された「薬価制度の抜本改革にかかわる骨子」では「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」の見直しや、長期収載品の薬価引き下げ、費用対効果評価の試行的導入などが織り込まれ、新薬・長期収載品・後発医薬品に限らず、薬価の引き下げ圧力は益々強まってくることが予想される。日本再興戦略の中の成長戦略分野と位置付けられるには厳しい市場環境が待ち受けているが、製薬各社はかつての護送船団から抜け出し、「生き残れる適者」となるべく、それぞれの目的地に向けそれぞれの航路(ビジネスモデル)を進み始めようとしている。微力ながらお手伝いできれば、と思っている。

※この記事は「村田兼一コンサルティング株式会社HP」の記事を転載したものです。

執筆者について

村田 兼一

経歴 村田兼一コンサルティング株式会社代表取締役。
1978年藤沢薬品工業(現アステラス製薬)入社。注射剤製造、無菌バリデーション技術開発、FDA対応、基幹システム(SAP)開発等に従事後、生産本部にて中期戦略企画、工場分社化推進・合併準備委員会に携わる。合併後のアステラス製薬では、戦略企画の後、製造委受託の推進を担当する。
2012年に退社し、村田兼一コンサルティング株式会社設立。工場の原価をはじめとする計数マネジメントを中心に、SAP開発を含むサプライチェーン全般の管理・改善を専門とする。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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