【第50回】Operational Excellence 実行の勘どころ 、“変革推進、品質は儲かる”

改善テーマを見つける 価値流れマップ Value Stream Map(その3)

 現状のプロセスをハイレベルに俯瞰する価値流れ図 Value Stream Map(VSM)については、第20回と第21回のプロセス分析手法の中でも紹介しました。重複する部分がありますが、再度紹介します。

【VSM、皆で作るプロセスマップ】
 VSMは、<図50-1>のように壁に横長の紙を貼り、約5~8名のグループでワイワイ・ガヤガヤ(ワイガヤ)方式で付箋とマジックでプロセスマップを作成します。何か元になる手順書、SOPや業務フローがあればそれを参考にします。製造工程やラボ試験工程では、手順を示した作業手順書にあります。一方で、製造工程を跨ぐもの、製造、QC、生産管理、倉庫、物流部門など、各部門とのつながりを表した大きなワークフローの図は存在しないケースが多いです。結論から言うと、VSMのような大きなプロセスマップはOPEX実行目的、対象領域に沿って、まずは皆の知恵を絞って描くことが一番です。最初のVSM作成ワークショップは90分から2時間程度です。
 「PCを使ってVSMを作成しても良いですか」と聞かれることがあります。対象プロセスを良く知っている人が、PC上でプロセスマップを作成した方が効率的だからとのことです。ケースバイケースではありますが、私が主催するワークショップでは、最初からPCでプロセスマップを作成することはお勧めしません。PCでプロセスマップを作成する場合、メインとなる誰かがPC入力を行い、他の人は見ているだけになります。大型スクリーンに映し出しながら行う場合も、最初は紙とペンを用いて手書きで行った方が早いです。紙の場合、イレギュラーな作業やコメントも枠外に自由に追記できます。マッピングのリーダーやファシリテーターを決めて皆で協力して作業することをお勧めします。
 PC上で綺麗に作るよりも、皆で作ると参加者の参画意識が高まります。マップを作成しながら、いろいろな情報を共有できます。作業の思い出しや振り返りもできます。話しながら行うと、他の人に触発されて新しいアイデアや気づきなども出るものです。同じ作業でも熟練者と初心者ではスピードや正確性が違う、シフトや作業者の組み合わせによる違いなども、作業プロセスの課題として発見できる場合があります。意見やアイデアを発言しながらのワイガヤ方式はVSM作成に有効です。ファシリテーターやリーダーは、実際に改善実行できるかどうかは別で、ここでは参加者の意見や考えを聞くことが大切です。
 VSM作成で不明な箇所や、後日データを取得する箇所はアクション期日と担当を決め、後日続きを実施します。そのような形で、何回かワークショップを実施し、VSMを完成させます。

<図50-1 皆で作成するVMS、プロセスマッピング>

VSM作成に関する具体的な前提条件を記します。

  • 誰か一人の経験や視点、想像でマップを作らないようにすること。
  • VSMは作業手順書を繋ぎ合わせた、SOP通りのあるべきプロセスマップ、Should be mapではありません。
  • As-Is map(現状のあるがままのマップ)を描くことです。
  • VSMを作成するメンバーで分からないことがあれば、実務担当者を呼び、その部分のフローを書いてもらう。あるいは実際に現場に行き、実務を確認します。
  • 現状のVSMを作成しながら、目指すべきプロセスマップ、To-be mapを作成したくなります。このようなアイデアは枠外に記載する、あるいは別の紙に記録しておきます。
  • VSM作成メンバーは、Should be(あるべき)、As-is(現状)、To-be(目指す)マップの3つを使い分け、まずはAs-is mapを作成することからスタートします。
  • 作成途中で出てくる意見やアイデアは後で使うので、付箋などに書き、枠外や別の紙に記録しておく。
  • As-is mapができたところで、To-be mapを描き、As-is とTo-beのギャップを見ながら、改善策や次のステップを考えることもあります。
<図50-2 「モノ」と「情報」の流れ図で現場の見方を変えよう>

 以上がVSM、皆で作るプロセスマップについての概要です。作り方の詳細、マップ中の記号、価値(Value)、付加価値(Value added, VA)と非付加価値(Non-value added, NVA)、各プロセスの数値評価、データボックスなどは、「モノ」と「情報」の流れ図で現場の見方を変えよう(2001, 日刊工業新聞社)を参照ください。とても役にたつ図書でお勧めです。

 

 

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