知的生産性を革新する組織構造・空間構造【第9回】

9. 革新的な施設の具体例-1

BMW、プロジェクト・ハウス

概略
BMWは世界で最もイノベーティブな企業の一つである。
またBMWはイノベーションの集中的管理に取り組んでいる。
BMWのプロジェクト・ハウスは、トーマス・アレンとドイツの著名な建築家・ギュンター・ヘンがBMWの役員と長い時間を掛けて、製品開発のための組織構造と空間構造の関係を研究した成果を、施設に実現した革新的な製品開発施設である。


図-18 BMW プロジェクト・ハウス 外観
 

組織の課題解決の考え方
BMWの製品開発組織は基本的にマトリックス構造である。
この組織構造は目標を達成するのに適しているが、技術チームとプロジェクトチームの対立などいくつかの問題がある。アレンとヘンはこのBMWのプロジェクト・ハウスの空間構造でマトリックス構造組織と空間の関係に一つの優れた解答を出している。


図-19 BMW プロジェクト・ハウス 組織

 
1. トーマス・アレンとギュンター・ヘンは、製品開発のイノベーションはテクノロジーとマーケットの両方からの情報を仲介するプロセスであると考えている。
 
2. 技術の機能組織は一般的に専門に特化した組織になっている。テクノロジーの動向を敏感に捕らえるには都合の良い仕組みだが、マーケットをうまく捉えることが出来ない。何故ならばマーケットニーズは製品とサービスである。専門別の組織でも捉えることが出来るが時間がかかる。また技術組織間のコミュニケーションもスムーズには行かない。
従って、機能部門が強いと技術者は満足するが、消費者は満足しない製品が開発される可能性がある。そこでプロジェクトチームが編成され、マーケットに対応した技術の融合を図るわけである。
 
3. マトリックス構造は機能チームとプロジェクトチームのツー・ボスの組織となるが、経営陣にとってマーケットが重要であるから、どうしてもプロジェクトチームの方を優先する傾向にある。その結果、技術の動向に弱くなりマーケットに受け入れられるが、技術的に満足しない製品が開発される可能性がある。結果的にマーケットから見放されることになる。
 
4. マトリックス組織では2つの組織には常にバトルが起きる。そのバトルは基本的に避けられない。しかし、2つの組織にバランスが取れている場合、適切な技術情報とマーケット情報がプロジェクトを構成しているチームの中に流れ、活発なコミュニケーションが起こり、製品開発のイノベーションが起こるのである。
どちらかが強くならないようにバトルを管理することがイノベーティブな製品を創出する、重要な組織運営である。

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