医薬品のモノづくりの歩み【第17回】

2023/04/28 品質システム

菱田 純

今回は、「安定操業」について述べる。

「モノづくりカルチャー」と安定供給(5)

 今回は、医薬品の「モノづくり」における「安定供給」のための重要特性の3つ目の大きな要因である「安定操業」についてお話します。
安定操業では、操業の平準化など、主に安定供給のためのソフト面の取り組みが中心となります。
 多品種少量生産の医薬品製造の特徴は、一つの製造ラインで多くの品目を切替えながら製造するために、秤量、造粒や打錠など単位操作ごとに工程を区分した配置となっていることが挙げられます。
そして、工程ごとにあるいは製剤と包装のライン間に、生産能力の差がありますので、工程間やライン間に中間製品の在庫を持つことがあります。また、専用ラインと比較して品目切替や型替えの頻度が多く、生産準備などのための時間の確保が必要になります。品目ごとに生産リードタイムが異なりますので、工程間で生産待機時間が発生しやすいことも特徴に挙げられます。
このような特徴を持つ医薬品製造における安定操業では、適切な生産の日程計画の立案と生産開始までに必要な原材料や要員を手配することが大切であることは言うまでもなく、更に、各工程や製造ラインの稼働率に大きな差が生じないよう操業の平準化に努めること、柔軟な要員確保ができるよう作業者の多能化を進めること、そして、製造リードタイムを短縮することなどに取り組みます。
そこで、この中から、ここでは操業の平準化について詳しく触れていきます。

 操業の平準化は、工場のどの工程も、どのラインも所定の量の品目の生産が澱むことなくスムーズに流れていることと捉えます。
つまり、生産に必要なスキルを持った要員が必要人数手配されていて、工程間の生産能力差が小さく且つ設備が安定稼働状態にあり、計画通り生産が進捗していることです。
工程やラインを細かく区分した医薬品の製造ラインでは、工程やライン間の能力差やトラブル発生時に生産が停止して、流れに澱が生じることがあります。
例えば、工程間では図1のようにA工程、B工程、C工程間に生産能力差が生じていて、生産能力の高いA工程と低いB工程間ではA工程中間体在庫が発生しやすく、生産能力がB工程より高いC工程間ではC工程での待ち時間が発生します。
この工程間の澱みを改善するために、まず、B工程、C工程の生産能力を改善して、A工程に合わせることです。あるいは、B工程の設備を増強して、パターン1または2のようにA工程又はC工程に能力バランスを合わせることにより、中間体や待ち時間の発生を軽減します。
更に、トラブル発生時に、工程のバックアップを確保することも、工程間の澱みの発生を軽減するためには有効です。

図1 工程間の操業の平準化改善例

 

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執筆者について

菱田 純

経歴 1980年第一製薬株式会社(現第一三共株式会社)入社。固形製剤の製剤研究に従事したのち、生産部門に移動。工場建設、本社生産物流企画、工場分社化、2007年旧三共株式会社との事業統合に伴う生産会社(第一三共プロファーマ株式会社)設立などを担当し、生産に関わるプロジェクトや生産戦略企画実行を数多く経験した。2007年同社取締役経営管理部長、平塚工場長。2014年北里第一三共ワクチン株式会社取締役副社長生産本部長歴任後、現在に至る。 ※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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