ラボにおけるERESとCSV【第100回】

FDA 483におけるデータインテグリティ指摘(70)


7.483における指摘(国内)
前回より引き続き、国内企業に対するFDA 483に記載されたデータインテグリティ観察所見(Observation)の概要を紹介する。

■ CCCC社 2020/1/31  483 1/2
施設:原薬・製剤工場

今回紹介する483はFDAのInspection Classification Databaseに登録されていない。従って本483はPAI(承認前査察)において発出されたものであろうと推測している。

■Observation 1
ラボにおいて必ずしも試験実施時に記録されておらず、データの帰属性と正確性を保証できない。
例えば、原薬の製造記録や試験記録に秤量器のプリントアウトが添付されているが;

① どの秤量器が使用されたか必ずしも読み取れない
② テストに使用したサンプル量が記録されておらずサンプル量の帳尻合わせをしていないため、テストがすべて抜けなく報告されていることを証明できない
③ 試験委託先に対し以下のことを要求していない
  • 適格性評価をした機器を使用すること
  • バリデートもしくはベリファイした試験法を使用すること
★解説
データインテグリティ要件である下記ALCOA原則の帰属性、原本性、正確性が満たされていないとの指摘である。

 

Attributable     帰属性
Legible        判読性
Contemporaneous  同時記録性
Original        原本性
Accurate        正確性

 

★指摘①の解説

  • 機器の管理番号をプリントアウトに含めることができる場合:
    • 管理番号がプリントアウトに含まれるよう機器の設定を行うこと
    • その設定は権限者のみが変更できるように保護すること
  • 機器の管理番号をプリントアウトに含めることができるない場合:
    • プリントアウトに機器管理番号を手書きで記入すること
    • データレビュアーは手書き記入された機器管理番号が機器使用記録(ログブック)の記載内容と一致することを確認し記録すること
  • 測定日時のプリントアウトも上記と同様な対応をしていないと指摘される。
    指摘例:測定日時をプリントアウトに含まれるよう設定していない。
    (483の例:2019/4/12 カナダ、2021/6/11 米国)

★指摘②の解説
サンプル量の帳尻合わせについて:
個数で管理するサンプルであると対応しやすいが、微量の粉体サンプルや液体サンプルを試験に使用する場合における検体管理は難しい。リスクに応じて同時ダブルチェック(4eyesチェック)を行うなど、ケースバイケースでリスク低減策を講じその正当性を説明出来るようにしておくのがよいであろう。どのような状況下における指摘か判らないが、悩ましい指摘であるように思える。検体管理に係わるリスクを洗い出し、必要であればリスク低減策を策定し説明できるようにしておくとよい。

テストが抜けなく報告されていることの証明について:
機器からのプリントアウトは破棄することができるので、テストをもれなくすべて報告したことをプリントアウトにより証明するのは難しい。以下の条件であれば、監査証跡がなくても電子記録によりテストの網羅性を証明できる。

  • 全ての測定結果が電子的に保存される
  • 電子的に保存された測定結果は削除できない
  • 電子記録のタイムスタンプは真正である

秤量器においてもこのような対応が求められるようになるのかもしれない。あるいは監査証跡つきの秤量器の採用や、監査証跡機能を持つシステムにより秤量器による測定を管理することが求められるようになるのかもしれない。

★指摘③の解説
PIC/Sの査察官むけデータインテグリティガイダンス(PI 041-1)の第10章「外部委託業務に於けるDI留意点」に以下の記載がある。

10.1 サプライチェインの一般的留意事項
  • 原材料供給、受託製造、分析サービス、卸業者、サービス提供者、コンサルタントを含む全ての外部委託業務が対象
  • 初期と定期的な適格性評価において、DIリスクやDI管理を検討すること
  • 実地監査でないとDI評価は難しい

業務を外部委託している場合には、委託業務内容をデータインテグリティの観点で実地監査する必要があると言うことである。(注:PIC/Sガイダンスに法的拘束力はない)

GMP省令第11条の5「外部委託業者の管理」に関し、以下の解説が課長通知に記載されている。

試験検査を外部委託業者(外部試験検査機関)に委託して行う場合
  • 外部委託業者(外部試験検査機関)が 委託された試験検査に係る業務(試験検査に関する設備及び器具の定期的な点検整備並びに計器の校正を含む。)を適正かつ円滑に行っているかどうかについて定期的な確認の方法等、必要な事項 について取り決めておくこと
  • 当該委託に係る製造・品質関連業務を適切かつ円滑に行っているかどうかについて定期的に確認するとともに、必要に応じて当該外部委託業者への改善請求を行うこと

課長通知に法的拘束力はないものの、FDA指摘の根拠を裏付けるような内容である。



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