医薬品開発における非臨床試験から一言【第36回】

2022/12/09 非臨床(GLP)

創薬をキーワードにICHについて考えてみます。

ICHと創薬

創薬をキーワードにICHについて考えてみます。創薬においては、非臨床試験により有効性と安全性を確認して、臨床試験を経て、承認申請に向けて進めていきます。この過程における「有効性」、「安全性」、「治験」における試験内容の指標は「規制要件」であり、グローバルな創薬を効率的に進めるのが基本で、ICHの活動は重要となっています。

「創薬」と一言で述べても、医薬品や医療機器業界での研究開発から製造、流通、販売までの領域は幅広く、また対象が世界中の人々の医療に用いるモノと言っても過言ではありません。つまり、日本での創薬と言っても、国際的な市場をカバーすることになります。そのため、薬事規制を考えると、国際社会の一員として、海外と連携して世界中の期待に応えることが重要です。

主な創薬拠点としては日本、米国、ヨーロッパが挙げられ、承認申請の基準が独自に整備されました。しかし、創薬のグローバル化に伴い、各地域の規制要件を満たすための試験の重複が課題でした。拡大する医薬品開発コストへの懸念を背景に、安全で有効な新薬をより早く提供するため、医薬品承認審査の基準の合理化と標準化が必要となり、1990年4月にICHが発足しました。世界各国の規制当局が連携したのが、ICH(International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use(医薬品規制調和国際会議))の活動です。

ICHの使命は、限られた資源を有効に活用しつつ、安全性・有効性および品質の高い医薬品が確実に開発され上市されるように、より広範な規制調和を世界的に目指します。そして、総会(Assembly)にむけて、管理委員会(Management Committee)、専門家がガイドラインの議論を行う各作業部会(Experts Working Group)等から成り立っています。

このEWGにおいては、規制当局と製薬業界が協働して規制要件の着地点を話し合っています。つまり、規制とは上意下達ではなく、現場(製薬業界)が考える方向を規制側が解釈して、両者でベストアンサーに仕上げます。ICHは世界中の知恵を集める会合と言えます。

1990年ICH発足時の規制当局メンバーとして、日本からは厚生労働省(MHLW)・医薬品医療機器総合機構(PMDA)、米国からは米国食品医薬品局(FDA)、欧州からは欧州委員会(EC)・欧州医薬品庁(EMA)が参加しています。
産業界メンバーとして、日本からは日本製薬工業協会(JPMA)、米国からは米国研究製薬工業協会(PhRMA)、欧州からは欧州製薬団体連合会(EFPIA)が参加しています。

現在、常任規制当局メンバーとして、ヘルスカナダとスイスメディックが参加しています。そして、韓国、中国、台湾等の規制当局メンバーが参加し、英国は2022年会合で英国医薬品医療製品規制庁(MHRA)が従来のオブザーバーから規制当局メンバーに移行しています。
日本では規制当局として国立衛研も加わっており、製薬業界からは東薬工/関薬協も参加しています。
 

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執筆者について

内藤 真策

経歴

兵庫県出身。元(株)大塚製薬工場 研究開発部員。
医薬品開発における薬物動態からの安全性評価を専門とし、光学活性体の薬物動態、mRNA変動による肝臓の酵素誘導、薬物相互作用などの分野に注力してきた。京都大学で学位取得。現在は信頼性の基準について議論。
製薬協基礎研究部会では長年に渡り副部会長を務め、薬物動態分野のレギュラトリーサイエンスを牽引した。徳島大学客員教授、薬物動態談話会常任幹事、日本薬物動態学会および日本毒性学会の評議員を務めている。
論文は英文97報、総説3報を執筆し、共著では「ファーマコゲノミクスの進歩と創薬科学への応用」、「代謝物の安全性評価における投与量設定と投与経路選定」、「探索段階を含む非臨床と臨床段階での非GLP 試験の効率的実施事例」など10編を数える。薬剤師、趣味は写真撮影・ドライブ。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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