医薬原薬の製造【第24回】


気になる製造装置として、最初にマイクロリアクターについて4回に渡り詳細を述べてまいりました。続編を書こうと思い、気になる装置をリストアップしてみましたところ、オンライン、インライン分析装置が多いことに気が付きました。そこで、オンライン、インライン分析装置についてこれから書いてみたいと思います。
 
オンライン分析、インライン分析とは?
オンライン分析、インライン分析同じような言葉ですが、どうも意味が違うようです。インライン分析は、化学プロセスの反応タンクや流路に直接分析装置を挿入して連続的もしくは間欠的に分析することを示します。一方オンライン分析とは、プロセスから資料をサンプリングして連続あるいは間欠に分析することを示します。サンプリングをするかしないかが、違うようです。サンプリングの違いだけですね。大した違いはないと思われるかもしれません。しかしサンプリングするのに人手がかかりますし、HPLCなどで分析するのもやはり人手がかかります。インライン分析は人手がかからない。オンライン分析は人手がかかると考えてよさそうです。
 
一方工程内分析をインライン分析と呼ぶこともあります。しかし、この項でのインライン分析の定義は先述の通り、サンプリングすることなく、連続もしくは間欠的に実施される分析です。
 
インライン分析の意義とPAT
バリデーションすることでプロセスが完成する。というのが従来のGMP思想でした。バリデーションが成立したプロセスでは、SOP通りに製造を進めれば、同じ品質のものが製造できる。これがバリデーションの原則です。しかし、実際に製造を進めて行くと、品質は微妙に上下します。品質パラメーターの±3σが規格内に収まるようにプロセスを設計しバリデーションを行っても、統計学的には、0.3%の確立で品質アウトが発生してしまいます。

ひと昔前のGMPでは、さらに良いプロセスを作りあげるという視点が不足していました。しかし、規制当局はICHQ9(リスクアセスメント)、ICHQ10(品質マネジメントシステム)を提唱し、医薬品製造プロセスは、バリデーションで完成され、それでお終いではなく、より良いプロセスに改良されていかなければならないという思想を業界に定着させようとしています。一方プロセスの改良には、一部変更申請を伴うことが多く、そうなると大変な労力がかかります。我々業界人はそれを熟知しておりますので、プロセスの改良にはどうしても二の足を踏んでしまいます。それでも、近年規制当局は、一変申請の必要なプロセスの改善を業界に推奨しているように見えます。それが今後の品質保証の流れとなっていることは間違いない事実です。GMP(Good Manufacturing Practice)は、BMP(Better Manufacturing Practice)に変わるのだという指摘もあるのです(下記GEヘルスケア・ジャパン社のHP参照)
http://www.gelifesciences.co.jp/newsletter/downstream/41_20_pat.html

プロセスを改善するポイントはどこから得るのかについて考えて見ると、これはプロセスの科学的理解を進めることです。プロセスで何が起きているのかを理解することです。この中心をなすのが、PAT(Process Analytical Technology)です。日本薬学会の薬学用語解説ではPATを、『リアルタイムな計測により、医薬品の製造工程の設計、分析、管理を行い、最終的に製品の品質を保証するシステム』と定義しています。インライン分析は『リアルタイムな計測』に当たります。この定義では一つ新しい概念が示されています。『設計』という言葉が含まれていることです。PATは、製造プラントの分析精度を上げるだけではなく、基礎段階、プロセス設計、生産段階のすべての開発過程で反応やプロセスの理解を進め、プロセスを改良することを最終目的としているのです。

どこの工場でも、工程の途中途中でサンプリングをして分析を実施して、反応や、合成操作などがうまくいっているのかを確認します。中間体で規格を設けて、これに適合しないものは、処理を中断するということもあります。このような工程内分析は、中間製品もしくは製品の段階で異常を検知することができます。しかしながら、異常を検知できても、分析のタイムラグがあるために、製造中にオンタイムで異常を検知し、製造中に何らかの対策をすぐに打つことはほとんどの場合できません。例えば、HPLCで反応混合物を分析したとします。サンプリングして、クエンチして、HPLCで測定すると、サンプリングから測定結果がでるまでに、早くても30分程度はかかってしまいます。このタイムラグの間に反応はどんどん進行して、分析結果が出てから何らかのアクションを打つことができなくなっていることが多いわけです。インライン分析装置を用いると、反応や工程操作中連続的あるいは間欠的にオンタイムで工程液を分析することができます。工程になにか異常が生じた場合、いち早くそれを検知することができます。この結果をもとに何らかのアクションを打つことも可能になってきます。

これがインライン分析装置のメリットの一つです。しかしそれだけの目的で高価なインライン分析装置を導入するメリットは大きくないと考えるのが普通です。インライン分析装置はあったらいい装置ではあるが、なくても生産はできる。それが多くの原薬工場の認識かもしれません。ですから現状ではなかなかインライン分析装置の導入が進んでいないと思います。しかしながら、規制当局がプロセスの連続的な改善を提唱していますので、徐々にインライン分析装置を導入していかないと、新しいGMPに対応できなくなる可能性があると筆者は考えます。

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