化粧品研究者が語る界面活性剤と乳化のはなし【第7回】

頼りになるのはやっぱり個性派??? 両性界面活性剤

界面活性剤には2つの顔があります。水となじみやすい親水的な側面と油となじみやすい親油的な側面です。界面活性剤は、このような相反する異質の性質をあわせ持っているために、汚れを落とし、クリームを作り、時に薬としての活性を示すことができるのです。ところが化粧品の世界では、2つどころか3つの異なる顔を持つアイテムが存在して、色々な場面で活躍しています。それが、今回ご紹介する「両性界面活性剤」です。

両性界面活性剤も、水となじみやすい「親水基」と油となじみやすい「親油基」でできていますが、さらにその親水基がプラスの電荷を持った「カチオン性の官能基」とマイナスの電荷を持った「アニオン性の官能基」によって構成されている点が特徴的です。「親水/親油」という真逆のキャラクターに加えて「プラス/マイナス」という方向の異質さをあわせ持っており、まさに、鮮やかな多面性を兼ね備えた分子と言えるでしょう。

 とはいえ、私がこの界面活性剤のパワーに気づいたのは、会社から大学に移ってしばらくたった頃でした。両性界面活性剤はシャンプー、ボディーソープ、洗顔料やエマルション型の化粧料を調製する時に、必ず配合することになる定番選手のひとつとなっており、あまりに日常的に使っていたために、恥ずかしいことながら、その個性を完全に見落としてしまっていたのです・・・。

 ある研究会に出席して、発表を聞いていたところ、立て続けに「両性イオン、素晴らしい!」というおはなしが続いていたのです。正直、えっ、となりました。この会で取り上げられていたのは必ずしも界面活性剤だけではなく、1本の高分子を幹にして、他の種類の高分子の枝をつけたグラフトポリマーや材料の表面にひも状の高分子を固定させて覆ったポリマーブラシだったりしたのですが、これらの材料にカルボキシベタインやスルホベタイン等の両性の官能基が含まれていると、タンパク質の吸着が防止されて、例えば、医療用機器に血栓が付着しずらくなるというのでした 1)。また、分光学的な測定やシミュレーションによって、両性イオンにはノニオン性の官能基よりも水分子が水和しやすく、周りに多くの水分子が吸着していること、この水和水の存在が高い抗血栓性をもたらしていることが分かっていたのです 2,3)

そんなことで、改めて両性界面活性剤のパワーを認識し、身体洗浄料/化粧品分野における両性の使われ方を確認してみたところ、確かに、このタイプの界面活性剤は、「3つの異なる顔」を生かした、ちょっと変わった使われ方をしていることが分かってきたのです!

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