医薬品開発における非臨床試験から一言【第32回】

ラット胆汁排泄モデルの作成

非臨床薬物動態試験ガイドライン(医薬審第496号)では、非変化体と代謝物を定量する生体試料に胆汁が含められています。また被験物質及びその主要な代謝物の排泄経路及び排泄の程度と速度を明らかにするために行う項目に胆汁が記載されています。特に、主要排泄経路が胆汁であり、かつ腸肝循環が薬物動態に重要な影響を与えると考えられる場合は、胆汁排泄についての評価が重要となります。そこで、今回は、胆汁排泄を検討する実験手技の基本、そして応用実験の工夫、解析などを取り上げます。

非臨床試験では、ビーグル犬を用いた胆汁排泄試験の報告もありますが、ラット胆汁排泄試験が簡便で一般的です。ラットは胆のうが無いため、肝臓からの胆汁は直接に総胆管を経由して小腸に排泄され、総胆管へのカニュレーション手術で胆汁排泄をリアルタイムで観察できます。一方、マウスは胆のうがあり、ラットよりも小さいため、胆のうカニュレーションは不可能ではないですが、手技が難しくなります。

胆汁排泄試験の方法を簡単に示します。実験には、特に指定が無い限り、7~8週齢程度のSD系ラットを用います。1夜絶食の後にネンブタールかエチルエーテルで全身麻酔をかけて、腹部を剃毛して、仰向けに四肢を固定します。少し深く麻酔をかけたほうが手術しやすいようです。麻酔管理に注意を払いつつ、まずは腹部を消毒して、正中線を皮膚切開し、次に腹筋を切開します。生理食塩液(市販輸液を使用)で湿らせた滅菌ガーゼ上に肝臓を反転させて、総胆管を視認し、周囲を剥離します。胆管に縫合糸をかけて引き上げ、小切開を入れてカニューレを挿入します。この時、呼吸の拍動があり、手元が揺れるため、挿入には注意が必要です。カニューレはポリエチレンチューブを加工して作成します。挿入後に縫合糸で固定し、胆汁の排泄を確認した後に、カニューレを開腹部位から外部に出して閉腹します。

術後はラットをボールマンケージに収容し、飲料水を与えつつ、排泄される胆汁を採取する準備を整えます。氷冷したチューブに採取すると代謝物も安定です。麻酔から覚醒し一般状態が良く、胆汁が安定的に排出されておれば薬剤を投与します。一般的な薬物動態試験では、放射性化合物の静注用薬剤を尾静脈から投与するか、放射性化合物の経口剤を経口ゾンデで投与します。そして、術後1時間毎に8時間程度まで収集し、その後、8~24時間、24~48時間、48~72時間と胆汁を採取します。

収集した薬剤は総放射能を測定して、投与量に対する割合(% of Dose)を求めて胆汁排泄率とします。また、胆汁をHPLC分析することで、未変化体と代謝物の排泄を観察することも可能です。この場合、開発初期で代謝物の構造解析ができていない場合は、単純に放射能検出器でピークを検出してM-1、M-2などの区別をつけて報告します。もちろん、LC-MSでの分析も有効です。ただし、投与液に放射性標識体を用いた場合は、分析をラジオアイソトープ研究室内で行う必要があります。

腸肝循環を観察する場合は、例えば、放射性化合物を経口投与して収集した放射性胆汁を、胆管カニュレーションを行った別の個体に、経口ゾンデで胃内投与します。そして経時的に胆汁を採取して、放射性胆汁が消化管から吸収され、再度、胆汁に排泄される過程を観察します。

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