非無菌医薬品製造における微生物学的品質の考慮事項 産業界向けガイダンス【第1回】

2022/03/18 レギュレーション

【第1回】和訳:非無菌医薬品製造における微生物学的品質の考慮事項 産業界向けガイダンス案

 2021年9月29日付で、非無菌医薬品製造における微生物学的品質の考慮事項 産業界向けガイダンス案「Microbiological Quality Considerations in Non-Sterile Drug Manufacturing」を米国FDAは出しています。
 非無菌医薬品の微生物管理に参考になると思われますので、知っておきたいところを和訳しました。この和訳が非無菌製剤の微生物管理の参考になると嬉しいです。不明な点は原文をご確認ください。なお、翻訳にあたっては、鈴木理絵子さんにご協力いただきました。
 このガイダンスの和訳に合わせて、日本薬局方の非無菌製剤の微生物管理並びに微生物問題での回収も紹介します。

 本ガイダンスの推奨事項は、固体だけでなく、半固体および液体の非無菌医薬品(例えば、局所塗布用のクリームやローション、スワブ、および経口の溶液や懸濁液など)を適用対象としています。「Ⅱ. BACKGROUND(背景)」では、「本ガイダンスは一部、非無菌製剤の汚染に関する有害事象報告(FAER)のレビュー、および関連の製品回収の結果をうけて、作成された」と作成経緯が示されています。2014~2017年に発生したFAERのレビューでは、内因性(製造・包装・輸送および保管に起因する)微生物または真菌による汚染に関連するFAERが197例、そのうち重篤な有害事象が報告されたのは32例であったとしており、さらに「FAERにおける自発報告は定義上自発的なものであるため、FDAはある程度の過少報告を予測している」との考えから、微生物汚染に関連した事象の実際の件数は報告された数よりもかなり多い可能性があるとの懸念が、本ガイダンスの作成につながった背景とされています。
 「本文書の内容は、法的拘束力を有するものではなく、特に契約に組み込まれている場合を除き、いかなる形でも一般の人々を拘束するものではない。本文書は、一般の人々に向けて、法律に基づく既存の要件を明確にすることのみを目的としている。FDAのガイダンス文書は、特定の規制や法律上の要件が引用されていない限り、推奨事項としてのみ捉えられるべきである。FDAのガイダンスで用いられるshouldという言葉は、何かが提案または推奨されているが、必須ではないという意味である。」

 食品は摂取量が多いため微生物の規制があります。医薬品は量が少ないので、日本では要求事項ではなく“参考情報”として記載されています。なお一部の原料と製品には微生物限度が設定されています。最近の欧米の医薬品には微生物項目が製造販売承認書に記載されており、その関係で微生物限度試験が承認項目に日本でも入りだしています。承認書に微生物限度試験が入っていないのは“参考情報”なので、企業の対応に委ねられています。この参考情報を参考に社内規格として管理しているところも増えてきています。特定菌は大腸菌だけでなく、黄色ブドウ球菌、緑膿菌、サルモネラ菌(動物由来原料の場合)も含めて管理しているとこともあります。

ではまず日本薬局方の参考情報の「非無菌医薬品の微生物学的品質特性」をおさらいしてみます。

表1 非無菌医薬品原料の微生物学的品質に対する許容基準値

 

総好気性微生物数

総真菌数

医薬品原料

103
(CFU/g又はCFU/mL)

102
(CFU/g又はCFU/mL)


表2 非無菌製剤の微生物学的品質に対する許容基準値

投与経路

総好気性微生物数

総真菌数

特定微生物

 

(CFU/g又はCFU/mL) 

(CFU/g又はCFU/mL)

 

経口(非水性製剤) 

103

102

大腸菌を認めない
(1 g又は1 mL)

経口(水性製剤)

102

101

大腸菌を認めない
(1 g又は1 mL)

⇒製剤工程には通常殺菌する工程がないため(アルコール造粒または加熱乾燥で減少)、原料の微生物管理が重要になります。

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執筆者について

脇坂 盛雄

経歴 1979年エーザイ株式会社入社、9年間、品質管理と21年間、品質保証を担う。
専門領域はGQP品質保証、注射剤及び固形剤の異物対応、品質リスクの発見と低減対応 ・医薬品/食品の表示校閲、製品回収リスク回避対策 ・逸脱/苦情対応、変更管理(一変/軽微変更)対応。品質保証責任者(品責)、統括部長および理事を歴任し、2013年9月末に退職。
現在は企業のコンサル・顧問を行う傍ら講演会講師、書籍執筆などを精力的に行っている。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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