医薬品開発における非臨床試験から一言【第16回】

2021/04/09 非臨床(GLP)

医薬品開発の中で血中濃度推移を中心とした薬物動態の評価は様々な場面で実施されています。そこで、本シリーズの新たな展開として、テーマを挙げて薬物動態試験のポイントをまとめます。今回は単回投与での評価ポイントを取り上げます。基本的には非臨床薬物動態試験ガイドライン(医薬審第496号、平成10(1998)年6月26日)を参照して説明します。このガイドラインは、ICH-M3に沿って、1991年版が改訂された内容になります。さらに、ICH-M3(R2)は2012年に出ており、TK試験のマイクロサンプリングのQ&Aは2019年に示されています。

被験物質には、原薬か、必要に応じて同位元素標識体を使用します。単回投与薬物動態試験の動物実験には、毒性、薬理および臨床試験との対応を考えて適切な動物種を使用し、必要に応じてin vitro 試験系を加えます。投与経路は、原則として臨床適用経路とします。投与量は、やはり毒性、薬理および臨床用量との対応を考えて選択します。反復投与の期間と間隔は試験の目的に応じて設定します。今回は反復投与の説明を割愛します。

定量法では標品の準備が必要です。未変化体、つまり被験物質はGLP試験のTK分析あるいは臨床試験にも対応し、厳格な基準と長期の安定性が保証されたものを使用します。一方、代謝物の標品は、別途に合成部門等から供給され、少量であり、必要最小限の品質保証となります。この「必要最小限の保証データ」は微妙ですが、例えば、純度は98%程度でも良いのか、安定性は定量分析までの比較的短期間でもいいのか、構造解析はどの程度の機器分析で済ませるかの議論があります。

そして、定量法の開発と、その真度、精度、特異性、定量限界等を明確にします。ここでも被験物質(未変化体)の定量方法は、先立って開発されますが、代謝物は未変化体と同じ分析系で定量したいのですが、構造的に難しい場合もあります。

今回は、単回投与による未変化体の血中濃度に注目した試験に限定して評価のポイントを議論します。ここでは経口投与薬を取り上げ、試験項目は「吸収」に分類されます。まず、探索試験の概略から取り上げます。代謝物の同定と評価については、いずれ取り上げますが、ここでは、主要代謝物が同定され標品が供給されていることを前提に話を進めます。

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執筆者について

内藤 真策

経歴

兵庫県出身。元(株)大塚製薬工場 研究開発部員。
医薬品開発における薬物動態からの安全性評価を専門とし、光学活性体の薬物動態、mRNA変動による肝臓の酵素誘導、薬物相互作用などの分野に注力してきた。京都大学で学位取得。現在は信頼性の基準について議論。
製薬協基礎研究部会では長年に渡り副部会長を務め、薬物動態分野のレギュラトリーサイエンスを牽引した。徳島大学客員教授、薬物動態談話会常任幹事、日本薬物動態学会および日本毒性学会の評議員を務めている。
論文は英文97報、総説3報を執筆し、共著では「ファーマコゲノミクスの進歩と創薬科学への応用」、「代謝物の安全性評価における投与量設定と投与経路選定」、「探索段階を含む非臨床と臨床段階での非GLP 試験の効率的実施事例」など10編を数える。薬剤師、趣味は写真撮影・ドライブ。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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