医療機器リスクマネジメント-国際規格の要求事項と実践対応-【第7回】

2020/02/28 医療機器

中谷 敬

残留リスク評価のまとめ

リスクコントロールが完了した時点で、リスクアセスメント(リスク分析とリスク評価のプロセス)のまとめをおこなう。通常は、特定したハザード/危険状態及び発生の可能性のある危害をリストにまとめる。このリストの項目は、簡単な医療機器でも数十項目、やや複雑な医用電気機器などでは数百を超えることも多い。このリストの名前や様式は、規格で規定されているわけではないが、多くの医療機器メーカでは、「リスクアセスメント表」、「リスク管理表」などと呼ぶものとして作成している。表7-1に、その手順とまとめ方の概要を示す。

 
表7-1 リスクアセスメント表のまとめ


リスクアセスメント表に抽出した全てのハザード/危険状態に対して、受容できないリスクが無いことを確認できた時点で、リスクマネジメントの主要な作業はほとんど終了である。

ISO 14971では、リスクアセスメント表でのリスクが全て受容可能なことを確認した後に、さらに、次の2点の確認を要求している。
・ リスクコントロールの実施後に新たに発生した残留リスクがないことを
  確認する。新たなリスクが発生すると思われる場合は、その受容可能性
  を確認する。受容できないリスクであれば、さらにリスクコントロール
  を実施する。
・ 最後に、全体としての残留リスクについて検討し、受容可能であることを
  確認する。


リスクマネジメント報告書の作成

リスクマネジメント表の作成が完了し、リスクマネジメントが計画に沿って適切に実施され、確認できたことを、リスクマネジメント報告書としてまとめる。ISO 14971では、リスクマネジメントプロセスをレビューして、次の事項を確認し、これをリスクマネジメント報告書に記載することを求めている。
・ リスクマネジメント計画が適切に実施されている。
・ 全体的な残留リスクが受容可能である。
・ 関連する製造及び製造後情報を入手する適切な方法が定められている。

具体的には、リスクアセスメントをまとめた文書を引用し、受容できない残留リスクが存在しないことを宣言すればよい。報告書は、リスクマネジメント計画書で定められた責任と権限を指名された担当者(第3回参照)が承認する必要がある。

なお、リスクマネジメント報告書と次に述べるリスクマネジメントファイルとを混同しないようにする。リスクマネジメント報告書は、リスクマネジメントファイルを構成する1書類である。


 

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執筆者について

中谷 敬

経歴 1974年、日本光電工業入社。医用センサ、生体情報計測機器の開発・設計に従事。
在職中、IEC/SC62D、ISO/TC121/SC3の日本国内委員会幹事として、医療機器国際規格の制定・改訂作業に参加。国際エキスパートとして日本コメントの作成・まとめを行い、国際会議に参加しての日本意見の反映に尽力した。
定年退職後は、コンサルタントとして独立。各種セミナー講師の他、首都圏の大学で客員教授、非常勤講師として医療機器技術、医療安全、国際規格について講義している。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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