業務効率化を目指す人へ ISOT入門【第1回】

・はじめに
世界ナンバーワンの長寿国である日本。国民の健康を支えていく上で欠かせない物の1つが医薬品です。そのニーズの重要性から、製薬企業各社の研究開発競争は厳しさを増しています。また、少子高齢化や働き方改革により、社会環境が劇的に変わりつつあります。財務省の平成30年度予算案において、社会保障費総額は約33兆円を計上されており、平成20年度予算と比較して、11.2兆円もの増加となっています。令和の時代においても更に社会保障費は増額の一途であることが予測されています。また、厚生労働省における対策として、社会保障費の増大を圧縮するべく、薬価推移は2000年から2016年までで、全医薬品平均約30%もの薬価引き下げが起こっています。各製薬企業において、医薬品開発最大の課題は、如何にしてコスト削減と業務効率化を図るか?に尽きると考えています。
筆者は、ライフサイエンス業界に専門商社として20年以上携わり、大学及び国立研究機関等で最先端の研究に勤しんでいる研究者様の縁の下の力持ちとしてサポートして来ました。また、製薬企業等の研究施設や製造施設で活動されている企業研究者の皆様が日々、課題解決に向けて試行錯誤されている状況を「外側」から観察し、業務全体を俯瞰する事で、トータルサービスを提供することの重要性を感じていました。そして、様々な研究者様との対話の中で創出された各種サービスを有機的に結合していく事で、各社のニーズに合わせた支援サービスを「ISOT」という形で確立する事ができたと確信しております。研究者様のご意見を傾聴した上で、オーダーメイド的にご提案していたサービスプログラムですが、今回はこのような機会を頂戴しましたので、サービス全体を一連の流れでご紹介させていただき、少しでも皆さまのお仕事のお役に立てれば、本当に嬉しいです。
 
 
1、会社概要
当社は2017年4月1日より旧理科研株式会社(1977年創業)から販売に関する全事業を継承し、新たな理科研株式会社として誕生しました。リカケンHDの創業理念となる『生命科学の進歩と人類の幸せを願って。人と人のふれあいの原点である「誠意」を社訓に。常に研究の場を思い描いて。』も継承し、試薬・理化学機器の販売を根幹事業としております。理科研株式会社も含めたリカケンHD全体の人員・売上構成は、以下の通りです。

図1:リカケンホールディングスについて(理科研株式会社「ISOTのご提案」より)
現在、アカデミックの研究現場では、効果的かつ効率的な研究計画が求められています。今までは研究者様の求める製品を「より早く、より正確に」提供する事を最優先にサービスの提供を行ってきました。これからは、更に研究者様の研究を支援するために、ニーズに合ったサービスプログラムを展開していきます。一方、企業を始めとした応用・実用化研究の現場では、研究開発に携わる人員にコストを割くために、研究の効率化と、それ以外の業務のコスト削減が進んでいます。そのようなお客様のご要望に応えるため、研究施設向け運用技術統合サービス『ISOT』のご提案を進めております。販売業務に加え、商品検索サービスや在庫管理システム、機器一括保守サービスなど、様々な側面からトータルサービスをご提案できるよう取り組んでおります。その活動の成果は以下の通りです。

図2:直近6年間の売り上げ推移について(理科研株式会社「ISOTのご提案」より)
 
研究の場を第一に、カスタマーファーストのサービスを提供していく事が最大のサポートであると考えています。快適な研究環境が、研究の革新やひらめきを生み出す事につながるという考えのもと、ラボラトリーデザインを始めとしたサービスが広がっています。ひいては科学技術の発展と幸せな未来に繋がることを願い、当社の立場でできることから堅実に行っていき、100年先もお客様に選んでもらえるようなサービスを提供して行きたいと考えております。
 
2、CSR  < CSV
CSR(Corporate Social Responsibility)は、企業の社会的責任と定義付けられ、企業が倫理的観点から事業活動を通じて、自主的に社会貢献をする責任とされています。しかし、昨今、世界各国でのCSRの認識は変化しつつあります。単なる社会貢献だけでは企業もしくは組織として責務を果たしていないとなってきています。そこで新たに提唱されているのが、CSV(Creating Shared Value)です。共有価値の創造と定義付けられ、企業による経済利益活動と社会的価値の創出を両立させること及び、そのための経営戦略のフレームワークが重要であるとされています。特に欧州ではEU全体でCSVの実現を掲げており、一企業や一国だけでなく、よりグローバルな戦略に基づき、共有価値の創造を推進していく事を積極的に進めています。製薬業界は特にグローバリゼーションの中での経営・開発戦略を構築していかなければなりません。開発現場においてもCSVの実現が求められています。ゆえに、『ISOT』がお役に立てると考えております。
 
3、ISOTの定義
ISOT(Integrated Service of Operation Technology)研究施設向け運容技術統合サービスとはいったい、どんなサービスなのか?現在は、下記の6つのドライバーで構成されています。
 
・R-ist UP:「リストアップ」電子購買サイト用検索エンジン
・Lab Stock Support:在庫資産管理システム(ZAICO)
・ZAI ※: 遊休資産匿名公開システム (ZAI)
・Recycle Network:中古機器買取販売サービス(ZAI)
・MULTI VENDER:一括保守契約サービス(ヤマト科学)
・Specific Construction Industry:特定建設業

※ZAIはZAICO社の登録商標
 
図3:ISOTの全体図(理科研株式会社「ISOTのご提案」より)
 
各ドライバーは、単独のサービスとしても機能を発揮します。しかし、複数のドライバーを組み合わせる事で各々のドライバーが持つ特徴・効果を増幅する事が可能になります。例えば、電子購買サイト用検索エンジンである『R-ist UP』と在庫管理システム『Lab Stock Support』、二つのドライバーをシステム導入します。『R-ist UP』に掲載されている560万品目の試薬・消耗品全てにQRコードもしくはRFIDタグを貼付し、指定の検収センターへ納品します。入庫管理及び出庫管理をQRコードもしくはRFIDで実施することで、人による入力ミスは格段に減少します。また、大量の入庫検収処理が目視確認から、RFIDによるスキャン処理になる事で、検収作業の大幅な時間短縮と人件費コストの縮小を実現することができます。また、購買本部を一極集約し、各研究施設や工場施設での在庫管理が物理的に隔絶されてしまっている状況でも、クラウドシステム上に全ての施設の在庫状況が一元管理されていますので、リアルタイムに各施設の在庫状況(棚卸し資産状況)を認識することが出来ます。全事業所においての『無理・無駄・無用』を排除していく事で、期限切れの試薬や、同じ消耗品を各研究室が過剰に購入するなどゼロミッション活動にも寄与できるサービスプログラムとして運用が可能になります。次項以降では、各ドライバーの特徴の説明と他のドライバーとの連携による相乗効果についてご説明させていただきます。
以上

執筆者について

経歴 ※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

連載記事

コメント

コメント

投稿者名必須

投稿者名を入力してください

コメント必須

コメントを入力してください

セミナー

eラーニング

書籍

CM Plusサービス一覧

※CM Plusホームページにリンクされます

関連サイト

※関連サイトにリンクされます