製薬メーカーと臨床現場とのギャップ【第3回】

2013/11/25 その他

0.はじめに
 「先生、この有害事象の転帰と治験薬との因果関係について、カルテに記載してください。」
 CRCと治験責任医師との間でしばしば行われるやりとりです。医師は「なんでこんなことまで書かなきゃいけないんだ」と言い、CRCは「決まりなので」と返す。どちらも釈然としない気持ちで業務が進んで行く。忙しい日常診療の合間に詳しいコミュニケーションが取れないと、なぜその作業をしなければ行けないのか、「理由」が置き去りにされ、「結果」だけを求められてしまいます。ゴールを共有することはもちろん大事ですが、手段の共有も疎かにしてはいけません。
 この話を踏まえ、今回は治験実施中の視点の違いについてお話します。
 
1.医師が書くカルテ
 医師は患者を診察し、その診察結果や処方の記録を診療録(カルテ)に記載します。医師が患者の診療をしたときは、遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければなりません1)。診療とは具体的に、診察・投薬・処方箋の交付・注射・手術及び処置・リハビリテーション・入院を指します2)。診療録の記載事項は、(1)診療を受けた者の住所、氏名、性別及び年齢、(2)病名及び主要症状、(3)治療方法(処方及び処置)、(4)診療の年月日となります3)。法で定められているのはここまでです。診療録の具体的な記載方法は、認定病院患者安全推進協議会が作成した「医療記録の記載指針(入院医療記録) V.6.0」(患者安全推進ジャーナル 2006/No.12)4)や、日本診療情報管理学会が作成した診療録記載指針(2006年12月)5)などいくつかの指針が公表されています。思考過程が明確になるように記載するため、問題志向的記載(POMR(Problem Oriented Medical Record)のSOAP(Subject、Object、Assessment、Plan)の考え方による記載)が推奨されています。つまり、問題を抽出し、計画を立て、実行し、評価する、いわゆるPDCAサイクルを回します。患者さんの疾患を見分け、診療計画を立て、治療を行い、効果を確認するのです。問題となる疾患は複数存在することも多く、患者さんの転帰を、診断名ごとではなく、経過の結果として包括的に判断します6)。この「包括的に判断」というのがポイントになります。

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執筆者について

福永 修司

経歴 東邦大学薬学部卒、東邦大学大学院薬学研究科修了。基礎研究と臨床研究の二足のわらじを履きこなす。2004年持田製薬株式会社医薬開発部に入社し、第I相から第III相のモニタリング業務や総括報告書の作成、アウトソーシングの運用等の開発業務を経験。2011年より成田赤十字病院薬剤部へ入職。医薬品調剤、抗癌剤混注、病棟薬剤管理指導などの業務と平行し、治験や市販後調査関連業務の管理を行っている。 ※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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