医薬品のモノづくりの歩み【第26回】

2024/01/26 品質システム

菱田 純

設備生産性と労働生産性について。

「モノづくりカルチャー」と生産性(6)

 前回まで工場における生産性向上の取り組みのステップ1をお話ししてきましたが、今回からステップ2を紹介しましょう。(図1)
ここでは、設備生産性と労働生産性についてです。

図1 工場で取り組まれる一般的な生産性向上のステップ

まず、設備生産性の向上です。
設備によってもたらされる生産性は、言うまでもなく設備を稼働させることで、どの程度のアウトプット、例えば出来高が得られたかで表されますが、設備を長時間安定稼働させたり、効率的に動かして稼働率を上げたりすることで、より多くの出来高を得ることができます。
先の連載で、設備の安定稼働は、医薬品の安定供給のための大要因であることに触れましたが、設備生産性を上げるという点では、次のようなことに取り組みます。

1)設備能力を上げる
 打錠機の回転数を上げたり、包装ラインの生産スピードを上げたりするなど、品質を維持しつつ設備能力の許容範囲内で設定速度を上げることです。
ただし、速度を上げることによってチョコ停など設備停止時間が増加しては意味がありません。

2)ボトルネックの工程や設備の改善
 生産ラインの中で設備能力が低いボトルネックとなる設備や工程がどこにあるか把握します。生産能力や作業効率が悪く、前後工程との能力バランスを損なっている設備や工程に対して、作業段取りの効率化や設備能力増強に取り組み、生産ラインがスムーズに流れるようにして、ライン全体の生産性を向上させます。

3)設備の稼働時間の延長
 設備の自動化・無人化によって設備稼働時間を延長して生産性を向上させます。近年、IT技術やセンサー技術の進展により、設備の無人運転、自動化レベルがかなり高度になってきています。打錠機や選別機などの夜間無人運転やC/SIP(自動洗浄)技術導入により、人の就業時間外での生産時間を延長することにより生産性を向上させます。

4)生産ライン改善
 生産ラインの生産性を上げるために、5S(整理、整頓、清掃、清潔、躾)やレイアウトの最適化などに取り組みます。レイアウトの最適化では、特に人とモノの動線を見直したり、設備操作や切り替えをやりやすくするための配置の改善に取り組みます。いずれも、非効率な作業や職場の乱雑さから生じる時間ロスを削減することで、生産性の向上に繋げていきます。

 

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執筆者について

菱田 純

経歴 1980年第一製薬株式会社(現第一三共株式会社)入社。固形製剤の製剤研究に従事したのち、生産部門に移動。工場建設、本社生産物流企画、工場分社化、2007年旧三共株式会社との事業統合に伴う生産会社(第一三共プロファーマ株式会社)設立などを担当し、生産に関わるプロジェクトや生産戦略企画実行を数多く経験した。2007年同社取締役経営管理部長、平塚工場長。2014年北里第一三共ワクチン株式会社取締役副社長生産本部長歴任後、現在に至る。 ※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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