ラボ・生産設備における省エネルギー化【第6回】

2013/10/07 施設・設備・エンジニアリング

今回から本題のGMP施設の省エネルギーの解説となります。
 
1.GMP対象施設とは
 GMPとは、医薬品、原薬・中間体、医療機器や化粧品などの工場で、製造設備(ハード)およびその品質管理・製造管理(ソフト)について、安全性を含む品質保証の手段として、事業者が遵守しなければならない基準のことです。もともとGMPを最初に法制化したのは米国で、1962年に「連邦食品・医薬品・化粧品法」の中に「薬品の製造規範(GMP)に関する事項」が取り入れられました。WHO(世界保健機構)は米国版GMPをベースにGMPを作成し、1969年の国連総会で加盟国に対して国内でGMPを採用し、医薬品貿易においてGMPに基づく証明制度を採用するように勧告しました。これを受けて日本でも、1974年に厚生省薬務局長通知「医薬品の製造および品質管理に関する基準」により医薬品GMPが作成され、以後医療機器、医薬部外品についても厚生省薬務局長通知が作られています。
 製造所の建屋・敷地、機械設備・施設、原料の保管・流通、製造・加工工程、品質管理、工程管理、包装、最終製品の品質検査・保管、従業員の衛生管理などが対象となり、これらが標準化され、基準を満たしていることが求められます。
 これらは当初、事業者の自主管理項目でしたが、1994~95年の厚生省令で「製造所のGMP整備」が医薬品などの製造許可の要件とされ、さらに2005年度の改正薬事法によって製造販売承認の要件とされました。なお、この薬事法改正に伴って、GMPの内容はISO 13485:2003「医療機器における品質マネジメントシステム-規制目的のための要求事項」に準拠したものに改定されています。
 一方、一般衛生に関するGMP(食品GMP)は米国では1969年に制定されましたが、日本では同様の法制度はありません。内容的には、食品衛生法に定められた総合衛生管理製造過程の「衛生管理の方法」や、同法に基づき地方自治体が定める「施設基準」「管理運営基準」などがGMPに相当します。
 また、別の管理手法としてのHACCP(HazardAnalycis and Critical Control Point)もあり感覚的にはGMPに近いかもしれません。
 GMP施設では、それぞれエネルギーの使用形態は異なりますが、中間原料品製造を除けば一番エネルギー使用量が多いのは空調換気設備であると思います。 従って本稿では、GMP施設の省エネルギーとして最初に空調換気設備について取り上げてみたいと思います。
 
2.GMP施設の空調換気設備の省エネルギー視点
 空調設備は熱源部、熱供給部と両者を結ぶ搬送設備で構成されますが、これら仕組みは何ら一般の空調設備と変わりありません。しかしこれらGMP施設と一般施設との空調設備の大きな違いは、空気の質、温度、湿度の管理、室圧力管理、気流管理などが一般と違い、非常に厳格にこれら管理を実施されるところに特徴があります。
 
 (a)空気の質とは供給される空気に塵埃、微生物などの汚染物質を基準以上含まないこと
 (b)温度、湿度の管理とは決められた設定範囲に制御され、微生物等の繁殖を防止し、製品の品質を均質に保つこと
 (c)管理圧力とは、交差汚染を防止するために決められた空間に気圧差を設け汚染物質の往来を規制すること
 (d)気流管理は圧力管理で生じる空気の流れを一方向に制御すること
 
 などの項目があげられます。このことから、GMP施設での省エネルギー対策は我慢をするなどの精神的な対策は不可能です。残念ながら最近巷間で実施しているクールビズなどは対策とは言えませんし、必ず決められた範囲の値がありますので、これを尊守することが何よりも重要なのです。でもこの法規尊守の精神こそがGMP施設の特徴であり、省エネ対策を阻害している要因かもしれません。

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執筆者について

佐藤 典男

経歴 FS工房株式会社 代表取締役社長。
1975年 日本揮発油株式会社(現日揮株式会社)に入社。その後日揮プランテック株式会社に転職。2011年定年退職。2011年起業、現在に至る。日揮在職中は原子力関連設備、病院、研究所、食品工業、医薬品工場などの空調換気設備、給排水衛生設備、特殊設備などの設計、建設などを担当。これら設備の省エネルギー対策にも精通し、ESCO事業の立ち上げに参画。半導体工業、窯業、精密機械工業、金属加工などの分野でのエネルギー診断で実績多数。エネルギー管理士。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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