医薬品のモノづくりの歩み【第24回】

2023/11/24 品質システム

菱田 純

前回に引き続き、ロスの発生原因と改善について、少し詳しく述べる。

「モノづくりカルチャー」と生産性(4)

 今回は、引き続き製造原価の労務費に影響するロスの発生原因と改善についてです。
労務費の上昇を招くロスには、作業ロス、チョコ停ロスと作業能率ロスがありますが、ここでは、先ず作業ロスについてお話しします。
作業ロスとは、作業指示に対する誤認識、慣れや思い込みによる作業ミスが主な原因になります。また、不注意などによる危険の軽視やヒューマンエラー、疲労、加齢による注意力や思考力の低下でケガの発生を招き、その結果、作業時間のロスを招くことになります。他にもコミュニケーション不足、近道・省略行動、そして、SOPに対する教育訓練不足などから作業ミスを招き、作業上でのケガに繋がることもあります。いずれも、発生した際の作業の停止や遅れ、対処などによる時間的なロスの発生に相当する労務費の上昇が生じます。
このような作業ロスの改善には、図1に示したようなことに取り組みます。
先ずは、作業者と指示する責任者間との双方向の良好なコミュニケーションを取ることで、指示内容をしっかり確認することです。
また、指差呼称や隠れた安全上の問題点を改善するためのKYT訓練、ヒヤリハット活動は作業ミス防止と安全作業において有効な取り組みです。M-SHELモデル(※参照)に基づく安全システムの改善や整理・整掃・清潔・清掃・躾の5S、オペレーション技能教育も欠かせませんが、人手による作業をできるだけ自動化、機械化することも有効です。

図1 労務費の増加を招く作業ロスの発生原因と改善例

労務費の増加を招くロスにはもう一つチョコ停ロスがありますが、チョコ停に関する詳細と取り組みについては次回まとめてお話ししたいと思います。
 と言うことで、最後に、間接費の上昇を招くロスの例から、管理ロスとエネルギーロスを取り上げて、発生原因とその改善例について話を進めます。
管理ロスには、生産計画の不備や原材料などの発注ミスによる原材料の準備不足が原因となって、生産を開始するまでの待ち時間が発生したり、製造現場での製造要員の手配不備によるリソース不足が発生したりする場合に時間的なムダが発生します。また、設備維持管理の不備により設備故障が発生した場合の事後保全や安全衛生管理と環境管理の不足により労働災害や環境汚染などが発生した場合、その対応に多くのリソースが費やされることも挙げられます。
 次にエネルギーロスとは、電力や燃料、水などを始めとしたエネルギーの損失のことで、このロスの発生は、不適切な稼働条件の設定やメンテナンス不足などユーティリティ管理の不備により、負荷がかかり過剰な電力の消費を招くことが挙げられます。

 

 

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執筆者について

菱田 純

経歴 1980年第一製薬株式会社(現第一三共株式会社)入社。固形製剤の製剤研究に従事したのち、生産部門に移動。工場建設、本社生産物流企画、工場分社化、2007年旧三共株式会社との事業統合に伴う生産会社(第一三共プロファーマ株式会社)設立などを担当し、生産に関わるプロジェクトや生産戦略企画実行を数多く経験した。2007年同社取締役経営管理部長、平塚工場長。2014年北里第一三共ワクチン株式会社取締役副社長生産本部長歴任後、現在に至る。 ※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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