医療機器の生物学的安全性 よもやま話【第46回】

 

内分泌攪乱化学物質の生物影響を考える際の予備知識として

 

 内分泌攪乱化学物質(EDCs)は、性ホルモンや甲状腺ホルモンによる制御系に影響を及ぼし、ばく露された個体だけにとどまらず、次世代にも影響する可能性があります。雌の生殖内分泌系への影響の研究を例としてご紹介したいと思いますが、話が結構複雑ですので、まずは雌の性周期や分化について基本的なお話しをいたします。

 雌性生殖器は多くのホルモンにより制御されています。排卵、受精、妊娠のための卵巣や子宮の機能を発現するために、これらのホルモンは重要な役割を担っています。また、正または負のフィードバック機構により調節を受けています。ホルモンが過剰に分泌されると生体にとって害となることが多く、このときに負のフィードバック機構が有効となります。また、子宮のエストロジェンに対するプロジェステロンのように相反する作用を示すホルモンの分泌を亢進することによって、一方の作用を抑制する機構も存在します。このように頑健に維持されているようにみえる性周期は、外的要因、すなわち環境因子によっても影響を受けることが知られています。例えばげっ歯類では照明条件を変えたり、感染や疾病、極端な低栄養やビタミン欠乏によって性周期が乱れます。
 げっ歯類のラットは、性周期が4~5日と人の28日程度の周期と比べると、かなり短期間に排卵を繰り返します。性周期には、発情前期、発情期(排卵期)、発情後期、発情休止期に分かれます。卵巣は、この周期の維持に深くかかわっていますが、その根源となるシグナルを出すのは、大脳の視床下部で、視床下部-下垂体-卵巣-子宮のような関係で、雌性生殖器は排卵~受精~着床~妊娠維持~出産というライフサイクルを管理していると考えていただいてよろしいかと思います。下図は、性周期のステージ毎の卵巣の組織像です。
 


 子宮や膣の組織構造も、性周期のステージ毎にドラスティックに変化し、顕微鏡での組織像や膣スメアの形態観察により、下図のようにどのステージかがわかります。
以上が正常に性成熟した雌の性周期の特徴です。
 

 

 

執筆者について

経歴 ※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

連載記事

コメント

コメント

投稿者名必須

投稿者名を入力してください

コメント必須

コメントを入力してください

セミナー

eラーニング

書籍

CM Plusサービス一覧

※CM Plusホームページにリンクされます

関連サイト

※関連サイトにリンクされます