【第41回】Operational Excellence 実行の勘どころ 、“変革推進、品質は儲かる”

プロジェクトの最初に行うこと(2)〜プロジェクトのゴールイメージを共有する

 プロジェクトや改善活動の最初に行うこと(2)プロジェクトのゴール、達成イメージを共有する、についてお届けします。

【達成イメージを明確にする】
 はじめに皆さんにクイズです。「定常業務とプロジェクトの違いは何でしょうか」、さっと答えられた方は、いつもプロジェクトに参加されている方ですね。一般的に定常業務には終わりはありません。顧客に製品やサービスを提供し続けるのが定常業務です。年間目標はありますが、目標は来年も再来年も続きます。プロジェクトは期間が有限でスタートと終わりがあります。プロジェクトを担当するリーダーがいて、目的と目標があり、そのためのメンバーが招集されます。リーダーとメンバーはプロジェクト期間中、専任あるいは兼務でプロジェクトを担当し、定期的にスポンサー(プロジェクトの依頼者)やマネジメントにプロジェクトの進捗報告を行います。プロジェクト完了後は、リーダーとメンバーは解任され、定常業務に戻ります。
 日本でよくあるパターンは、プロジェクトのリーダーとメンバーが定常業務と兼務で、定常業務の上にプロジェクトが付加することです。プロジェクトはなんとなく始まって、終わりが見えない場合もあります。最初にざっくりとした計画を立てますが、緩やかな坂道を登るように少しずつ改善を行い、計画が途中でどんどん変更されるケースもあります。
 大切なことは、プロジェクトメンバーが決まったら、プロジェクトの達成イメージをチームで明確に共有することです。各部門から集まったメンバーはそれぞれに思いがあり、達成イメージがチームで1つではない場合があります。正しくイメージできていない場合もあります。図41-1に示すように、例えば山といってもいろいろな山があります。いつ登山開始し、いつまでに登頂すると言っても、準備期間や頂上に到着するまでの道のりのイメージは多々あります。プロジェクトキックオフで、プロジェクトの達成イメージを絵に書いて視覚化すると良いです。絵にする過程でいろいろな質問が出て、メンバー間でより明確な達成イメージを共有するのです。
 その上でプロジェクトにかかる工数を見積もり、具体的なメリット、デメリット、リスクなどを添え、プロジェクトのスポンサーに提示するとよいです。工数見積もりの大切さの話は別の機会に行います。ここではゴールイメージの共有についてです。
 プロジェクトゴールには短期と中期があります。3ヶ月後をゴールとする人もいれば、数年後のより高い目標をゴールイメージとして持つ人もいるかもしれません。プロジェクトを進める中で達成イメージが変わる場合もありますが、それでもよいのです。チームで同じ達成イメージを共有することが大切です。

< 図41-1 達成イメージを共有する >

 【一緒に活動するメンバーを選べず失敗、達成イメージを共有できず失敗した例】
 私が過去に失敗した例を2つ紹介します。
 1つ目はプロジェクトメンバーの選考に全く関与できず、OPEX推進責任者に任命され、プロジェクトがカオス状態になったケースです。外部コンサルティングが外人トップと非現実的なプロジェクトロードマップを作り、それに従わざるをえない状況でした。トップからの指示でメンバーは各部門から最低1名ずつ選出されましたが、メンバー選定は部門任せでした。選出メンバーは生産部門全体の重要課題を担当するにも関わらず、生産プロセスに対する経験や知識は乏しく、プロジェクト未経験者ばかりが選出されました。メンバーは定常業務と兼務で、プロジェクトに参加できる工数は30-50%でした。メンバーのレポートラインは部門にあり、プロジェクト期間中にプロジェクト責任者(私)は、メンバーの出勤や工数管理もできない状態でした。チームとして1つになれず、プロジェクトは見事に崩壊しました。
 他にも失敗要因はありますが、第40回で紹介した「異能の掛け算」、最初のコアメンバーは5名以下で、3タイプ(Biz、Tech、Creative)の人材を採用し現実的な計画を立てスタートするに対して真逆を行った例です。

 2つ目は、チームは5名以下で3タイプに近い人材が集まっていましたが、それぞれが勝手に動き、達成イメージを共有できずにプロジェクトが頓挫した例です。メンバーは私の前任者が集め育成し、前任者の退職に伴い、私がマネージャーを引き継ぎました。私を採用した上司は「前任者とは異なるアプローチでプロジェクトを推進して欲しい。従来のやり方を変えるので、メンバーからの抵抗はあるだろうがサポートする。」との約束でチームを引き継ぎました。私が就任後、上司は別部門に異動となり、風向きが変わりました。新しい方針を示してもメンバーからの抵抗だけが残りました。達成イメージとその達成プロセスの理解が得られなかったのです。チームがギスギスしはじめ結果としてプロジェクトは行き詰まりました。
 ミーティングを重ね、図42-2のように、ゴールイメージを丁寧に説明しました。目標達成時のイメージを各自が明確に持てるように何度も議論しました。しかしながら、どうにも従来からの仕事のやり方を変えられず、お互いの信頼関係が築けないままチームは一旦仕切り直しとなりました。あとで聞いた話ですが、私が就任してからも、メンバーは旧マネージャーを慕い、会社の外でインフォーマルに集まっていたようです。文字にするのは簡単ですが、現実としてゴールイメージの共有が難しかった例です。

 その時々で組織には優先順位があり、自分がメンバー選定に関与できないことが多いです。プロジェクト実施の前提条件、進め方や支援の約束が反故されることがあります。プロジェクトの成功には自責と他責の両方があります。完璧なプロジェクトプランはなく、プロジェクトの進め方に正解はありません。しかしながら、自分がメンバーを採用し、現実的な計画を立て、チームで目指すゴールを上手く共有できたとき、プロジェクトの成功確率は高くなります。条件が揃わなかったときでも、いかにうまく運営し、目的を達成するかはプロジェクトリーダーとチームの相互理解と歩み寄りがキーです。
 2つの失敗例は、私にとって学びが大きかったです。

< 図41-2 達成イメージを丁寧に説明する >

 

 

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