ゼロベースからの化粧品の品質管理【第30回】

化粧品GMP手順書の作り方 ⑮文書化

 化粧品の品質管理についてお話させて頂いており、今回は手順書関連の最後の項目となる⑮文書化についてお話させて頂きます。
 GMP体制を構築するにあたっては、必要なルール化の体系を明確にし、これに対応する文書である規定書、手順書、標準書、記録書の体系を作成することになります。文書化の目的は、GMP体制として決められたルールを順守し各プロセスの遂行を確実にすること、そのエビデンスとして記録書に残すことです。つまり、査察や監査対応として雛形をコピペして手順書類は整っていると片付けるのではなく、使える手順書、標準書となっていることが必要です。民間の認証機関の化粧品GMP認証は得ていると会社でも雛形そのままに近いケースを見ますが、雛形を基にして自社の実態に合わせて文言を追加することが必要です。また、記録書も記憶で作成出来てしまう書式となっていたのでは有効な記録書とは言えません。つまり、製造工程で攪拌時間、8000rpm・10分間と規定されていた場合、記録書でレ点だけの記録で十分でしょうか? 可能ならば10:11~10:12、8010rpm等の方が確実にコントロールされていたことが確認できるのではないでしょうか?一方、最近ではタブレット端末が汎用されていますので、紙面に比べて持ち運び、検索面でも優位になりますので、書式もこの形式にあったものにすることも一案です。そうすれば、入力した時点でタイムレコードとして記録に自動で取り込むことも可能です。
 文書化も深掘りすれば色々ありますが、今回は文書化の目的と抑えるべき事項の概要についてお話します。

1.必要とされる文書(参考:GMP省令。医薬品向けから化粧品向けに解釈)
 GMPで必要な手順書類は、化粧品連合会が雛形を示しており、この雛形を活用している企業が多いように感じます。ここでは基本に戻って必要とされている文書について医薬品のGMP省令から確認したいと思います。

● 組織(第6条)
● 製品標準書(第7条)
● 衛生管理、製造管理、品質管理、出荷判定、(バリデーション)、変更管理、逸脱管理、品質情報管理・品質不良品に関する管理、回収処理、内部監査、製販との取り決め事項に関する管理(第8条)
● 製造設備の保守・衛生管理、製造指図書、製造所内の環境管理、製造手順、原料・材料、中間製品、製品の受入れ・保管・出荷管理、製造所の立ち入り制限
〈第10条〉
● サンプリング手順、試験検査および外部試験検査機関の利用管理、試験検査機器管理・校正管理、試験結果の判定管理、経時試験、製造管理記録に関する管理
(第11条)
● 状態管理・識別表示、コンピュータシステム管理 等
● 上記の規定・手順書およびその記録、
 工場で実際に運用する上では、製造管理基準書等として関連の事項をまとめて文書することも有効ですし、例えば、製造設備に関しては薬事申請書の構造設備の届出書のリストに基づきそれぞれの単位操作手順書(SOP)として整備することも有効です。何れにしても文書体系の全体像が分かるようにしておくことが必要です。標準書とその記録書が対応する場合には一覧表で示すことが分かり易く、記録書の漏れがないようにすることが出来ます。
 

2.    文章化を進めるうえでの注意点

① 作成、改訂等を行う場合は、責任者を明確にすること、作成、確認、照査、承認の手順を経ること、無暗に印鑑を多数の人がおすのではなく、確認・照査・承認を一人の人が行っても問題ありませんが、確認、照査では何を行うのかを明確にしておく必要があります。
② それぞれ、署名、日付、改訂番号を記載します。改訂に場合は、改訂内容及び改訂理由を記載し、履歴を保管します。
③ 手順書等は品質部門が確認したことが確認できるようなフォーマットにしておくことが必要です
④ 文書・記録を受領した各部署の責任者は、関係者に閲覧や教育訓練を行うとともに、利用可能な状況にしておく必要があります。特に、情報伝達、有効な教育の実施については、だれが判断し、何時、どのように実施するのか、実施したことについては手順書で明確にすると共に、記録書を作成することで漏れがなくなります。
⑤ 文書・記録を改訂・廃止した場合は、誤って使用されないように「旧版」「廃止」等明確に識別すると共に、誤って使われないようにすることを確実にすることが必要です。各人がコピーを自由に取っている場合や各グループの責任に任せている場合は要注意です。
⑥ 保存期間を過ぎた文書・記録は、内容を確認し破棄の可否を最終判断した後、適切な方法で破棄します。
⑦ 作成した文書は原本、正本、副本の管理を確実にします。原本は改ざんが出来ないようにすること、紙面で保管する場合には原本は確実な場所に別保管し、正本を関係部門に配布するようにすることが必要です。
⑧ 電子媒体を利用する場合は、ALCOA原則に則ったデータとなっていること、バックアップシステムを整えていることが必要です。

 

 

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