医薬品のモノづくりの歩み【第15回】

2023/02/24 品質システム

菱田 純

大きな要因ごとに、中骨や小骨で挙げた要因に触れながら、重要要因一つひとつについてもう少し詳しく話を進める。

「モノづくりカルチャー」と安定供給(3)

 では、今回から大きな要因ごとに、中骨や小骨で挙げた要因に触れながら、重要要因一つひとつについてもう少し詳しく話を進めていきます。
 まず、生産計画についてです。
 生産計画とは、工場の各部門において納期を守るための基準になるもので、仮に、トラブルなどで計画の見直しが必要になった場合に、適切に計画を修正して、各部門の生産活動を円滑に進められるようにするものです。

 生産計画を立てる目的は、一般的には、

  • 販売計画に対して、納期や生産数量、在庫水準を保証するためです。
  • 原材料の手配の基準とするためです。
  • 生産能力や生産リードタイムに見合って、操業の平準化と効率化を図るためです。
  • 長期的な生産計画では、長納期の原薬、原材料や人員、設備の準備をするためです。

などが挙げられますが、特に多品種少量生産である医薬品製造では、在庫情報や生産ラインの稼働状況に基づいて、品目毎に生産する順序の優先度を適切にするために立てられます。

 工場では各部門が図1に示したようなあらゆる業務を通じて連携し、生産の役割を果たしています。従って、その道標となる生産計画は、精度の高いものが要求されます。精度の高い計画を立案するためには、生産に関わる様々な情報を把握して、的確に計画に反映することが重要です。
特にGMP基準を遵守して製造を進めていく医薬品製造では、最近では、変更管理やCAPA計画を生産計画に適切に反映することが重要になってきています。

図1 工場各部門の主な業務関連図

 原材料や製造条件などの変更管理が計画されていないか、あるいは、変更管理の手続きが生産開始までに終了しているかです。
例えば、変更された原材料が、どのロットから使用されるか、特に汎用添加剤などの共通原料は、使われている製品ごとの生産計画に気を付ける必要があります。そして、変更管理の対象となる原材料の引き当て、払出しは変更管理承認をもって可能となるようにします。
 また、設備や製造方法の変更が発生した場合では、GMP手順に則って、生産開始までに変更管理手続きを終了していることが大切で、生産計画の見直しは、変更管理スケジュールに基づいて適切に修正します。
 更に、品質試験法や規格の変更では、変更時期に従って、生産計画で対象となる製品ロットから新しい試験方法と規格で正しく評価されるよう明確にします。


※関連セミナーのご案内
■5月23日
医薬品製造を担う工場従業員が知っておきたいQCD基礎編
~工場配属まもない従業員のモノづくりの基礎知識習得と即戦力を目指して~

 

2ページ中 1ページ目

執筆者について

菱田 純

経歴 1980年第一製薬株式会社(現第一三共株式会社)入社。固形製剤の製剤研究に従事したのち、生産部門に移動。工場建設、本社生産物流企画、工場分社化、2007年旧三共株式会社との事業統合に伴う生産会社(第一三共プロファーマ株式会社)設立などを担当し、生産に関わるプロジェクトや生産戦略企画実行を数多く経験した。2007年同社取締役経営管理部長、平塚工場長。2014年北里第一三共ワクチン株式会社取締役副社長生産本部長歴任後、現在に至る。 ※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

連載記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

セミナー

2025年7月2日(水)10:30-16:30~7月3日(木)10:30-16:30

門外漢のためのコンピュータ化システムバリデーション

2025年8月21日(木)10:30-16:30

GMP教育訓練担当者(トレーナー)の育成

CM Plusサービス一覧

※CM Plusホームページにリンクされます

関連サイト

株式会社シーエムプラス

本サイトの運営会社。ライフサイエンス産業を始めとする幅広い産業分野で、エンジニアリング、コンサルティング、教育支援、マッチングサービスを提供しています。

ライフサイエンス企業情報プラットフォーム

ライフサイエンス業界におけるサプライチェーン各社が提供する製品・サービス情報を閲覧、発信できる専門ポータルサイトです。最新情報を様々な方法で入手頂けます。

海外工場建設情報プラットフォーム

海外の工場建設をお考えですか?ベトナム、タイ、インドネシアなどアジアを中心とした各国の建設物価、賃金情報、工業団地、建設許可手続きなど、役立つ情報がここにあります。

※関連サイトにリンクされます