理系人材のための美術館のススメ【第2回】

第2回「美術館散歩の行先はお気軽モードで」

 美術館にあまり足を運ばない方向け、「理系業界に美術館のご利用をプッシュしてみよう」という本コラム、2回目は「ではどこに散歩に向かおうか?」という話です。
 一応、本稿において美術館はあくまで「お散歩」先です。気軽にふわっと脳内リセットをしようというのに、どこに行くかを一生懸命考えたり、探したり、行こうと思ったタイミングのチケットが取れなくてじたばたしたり…というのは、本末転倒。行きたいときにぶらっと行くのが散歩であって、日時やタイミングに合わせて行ったら、それは「おでかけ」ですからね。
 趣旨は「いつもの業務と頭切り替えてまったりリフレッシュ」、そんな緩さで引き続きお願いいたします。

【「○○さん展」は散歩向きではない】
 さて、そうは言っても一般に「美術館に行く」と言ったときに候補によく上がってくるのは、画家個人にスポットをあてた「○○さん展」でしょう。ここしばらくでも、ゴッホ展、ミロ展、ミケル・バルセロ展、ピカソもやっています。邦人だと篠田桃紅展とか北斎、そうそう、鏑木清方展をやってました。置きチラシがあるのもこういった「企画展」が主なので、広告を見る機会は多いのですが、やっぱりこれ、求めている散歩向きではないと思われます。
 TVでも雑誌でもWebでも、常設展を薦めてくる媒体というのはとても少なく、やはり「今の時期限定」となる企画展こそ美術館の花形であるのは間違いありません。美術館にすればお金かけて企画したものなのですから、当然人にいっぱい来ていただいて、おみやげに限定グッズを買ってもらいたいわけですよ。筆者も年がら年中行きますが、ただどうしても、緩くまったりとはいきにくい。
 力の入った解説は多く、ついでに人出も多く、バリエーションは少なく、チケットが高いわりに展示点数が少ない可能性があるのが企画展です。コロナ禍前なんて行列四時間待ちとかありました(パスしたけど)。せめても目当ての一品があるならそんな我慢だって問題ないといえますが(いやあるけど)、それもう散歩じゃなくてデートですよね?
 そう、個人をテーマに取り上げた企画展の密度は、デートかお見合いのレベルです。デートなら我慢できることも、「ちょっと友だちになってもいいかなー」…くらいの興味しかもっていない場合は、けっこうキツい。だって考えてもみてください、いきなりその人の生い立ちから始まって、人生の岐路だの苦境だの成功だの晩年だの遺作だのとがんがん向こうから語りかけてくるんですよ、重たくないですか?(重い)。「まだそこまであんたのことを知りたいわけではない」と言うに言えずに挙げ句死に様までお付き合いするなんて、普通難しいと思います。
 もっとも、逆に意外な一面を知って「なんか思ってたよりアイツずっといい奴だった!」という展開が期待できるのもこの「○○さん展」。誰もが必ず見たことがあるピート・モンドリアンさんのモンドリアン展なんて(名前でググってみましょう絶対見たことあるから)、どうやって展示するんだと疑問に思いつつ行ってみたらものすごい楽しかったです。慣れて余裕が出てきたら、デートも全然いいと思います。

 ただ、頭を使いたくない時や気分転換したい時、そしてけしてその○○さん目当てでないのなら、やっぱり散歩ではたくさんの画と大した会話もせずにぶらぶらしたいものです。そんなわけで初期の散歩のお薦めは、「揃えのいい美術館の常設展」にハズレなし、ということになります。
 

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