医療機器の生物学的安全性 よもやま話【第64回】

2025/04/25 医療機器

前回に引き続き国内通知のアップデートについて

国内通知のアップデート(続き)

 国内通知が2025/3/11に正式に発出されました。

 「医療機器の製造販売承認申請等に必要な生物学的安全性評価の基本的考え方についての改正について」の全部改正について(令和7年3月11日 医薬機審発0311 第1号)で、同時に、医療機器の製造販売承認申請等に必要な生物学的安全性評価の基本的考え方に関する質疑応答集(Q&A)について(厚生労働省医薬局医療機器審査管理課事務連絡)も示されています。
 内容は以前お示ししたとおりで、試験法は公的規格としてリスト化されたものを参考にするという建付けです。

 今回は発出されたばかりで、実際にどのように運用されるのかは、今後の動向を注視する必要があるものの、以前お示した情報からもう少し踏み込んで読み取れるところを述べたいと思います。

 注目しましたのは、3. 申請書添付資料に生物学的安全性評価結果を記載する際の留意点の項です。
 ここではまず、STEDに示す記載事例についてPMDAのサイトのURLが示されています。
 https://www.pmda.go.jp/review-services/drug-reviews/about-reviews/devices/0055.html

 事例として踏み込んで示さていると感じたのは、4-5.生物学的安全性のリスク評価(生物学的リスクアセスメント)の記載例の部分です。下記に引用させていただきます。


(記載例)
【試験を実施した場合】
 本品の生物学的エンドポイント評価に必要な試験を実施した結果、すべての試験において判定基準を満たしていた。よって、本品の原材料や臨床使用時に溶出する可能性がある化学物質が生体に与える影響は限りなく小さいと考えた。
 従って、新たなリスクコントロールは不要であり、本品は生物学的安全性が十分に担保できているものと考える。

【試験を実施し、一部の結果に疑義がある場合】
 細胞毒性試験において弱い毒性反応が認められたが、細胞毒性試験は感度の高いin vitro試験であること、評価対象の最終製品中に微量の細胞毒性を示すXXが存在していたこと、他のin vivo試験などで組織侵襲性を示すような毒性が認められなかったこと、加えて、海外販売実績などから特段毒性学的に問題が生じているような有害事象が報告されていないことなどから、本結果は生物学的安全性評価において特に問題となる結果ではないと判断した。
 従って、新たなリスクコントロールは不要であり、本品は生物学的安全性が十分に担保できているものと考える。

【一部の試験実施なしの場合】
(例)急性全身毒性:本品は、急性全身毒性の評価を必要とされる医療機器である。本品を実臨床下において使用する際、生体に接触する部位から化学物質等が溶出されないことはXX試験で確認済みである。また、本品は累積的な使用/一定期間体内埋植されることから、亜急性全身毒性試験にて14日間以上の評価がなされているが、当該試験中、試験検体に関わる毒性の兆候はいずれの動物においても認められなかった。以上のことから総合的に考えて、急性全身毒性試験を新たに実施する必要はないと判断した。

(例)急性全身毒性:本品は、損傷表面に短時間接触する医療機器であり、溶出液が短時間で大量に体内に流入することはない。

(例)材料由来発熱性:本品の原材料は、PTFE、 PUであり、血管内に用いられる医療機器の原材料として、多くの実績のあるものである。また、本品の使用時間は短時間であり、最終製品の溶出物が大量に溶出することは想定されないため、材料由来の発熱性が認められる可能性は非常に低いと考えられる。

【試験実施なしの場合】
 本品は身体への接触程度及び接触期間が同等である自社既承認品で臨床使用実績のある原材料を使用し、製造方法や滅菌方法も同一である。また、既承認品の市販後実績などから、毒性学的に問題となる情報は認められなかった。よって本品は新たに試験を実施しなくても生物学的安全性が十分に担保できているものと考える。

 

 

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執筆者について

勝田 真一

経歴 一般財団法人日本食品分析センター 理事
1986年財団に入所し、医療機器、医薬品、食品、化粧品及び生活関連物資等の生物学的安全性評価に従事。1997年佐々木研究所研究生として毒性病理学及び発癌病理学研究に携わる。1999年東京農工大学農学部獣医学科産学共同研究員として生殖内分泌学研究。日本毒性病理学会評議員、ISO/TC194国内委員会、ISO/TC194 WG10 Technical ExpertやJIS関連の委員などを歴任。財団では薬事安全性部門を主管し、GMPやGLP対応を主導。情報システム部門担当を歴任。大阪彩都研究所長を経て現在北海道千歳研究所長。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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