海外体験談【第2回】

 私は、海外勤務を終えて帰国後、二年前に独立し、現在、製薬・CMC関係のコンサルタントをしております 日比と申します。この度、お世話になっているCM Plus様から執筆依頼を頂き、50歳半ばから単身渡米しその後6年半の米国での勤務経験を中心に海外事情なども織り交ぜ、3回の連載を執筆させて頂くことになり、今回はその第2回目です。
 さて、前回第一回目では、なぜ50歳半ばから単身渡米しアメリカ勤務しようと思ったのかその背景を説明させて頂きましたが、この第二回目では50歳半ばからのアメリカ勤務時代の経験談をお話ししようと思います。
 
 30歳台半ばの1年半のアメリカ勤務から帰国後は、そこでの経験を生かし、三つの製薬会社の製剤研究所・工場で仕事をして参りました。三番目に勤務した会社では当時55歳が役職定年でしたのでその歳に近づいてきた頃、その後の人生設計を考え始めた頃から、それまでしばらく眠っていた30歳代半ばの夢だった、いつかまたアメリカに行きそこで仕事をしたいという強い思いが蘇ってきたのを覚えています。
 そんな折、偶々、以前二年半程勤務していた製薬会社の研究開発の方とお目に掛る機会があり、その会社(国内中堅製薬会社)が最近アメリカで子会社を設立し研究開発の面倒を見られる人材を探しているが、良かったら来ないか?との提案を突然頂きました。その時点では家族の都合もあり、直ぐに返答できる状況ではありませんでしたが、とても魅力的な提案でした。その後、約1年の間に、子供二人とも大学を卒業し仕事を始め、家族の協力も有り2004年9月から単身、西海岸カリフォルニア州サンノゼにある国内中堅製薬会社の子会社で研究開発の仕事をすることになりました。
 僅か2年半の短い間しかお世話になっていなかった会社の方から、この時期に再び米国で仕事のチャンスを頂けたことに、人との縁の不思議を感じています。
 
 サンノゼはシリコンバレーの一角にあり、昔住んでいたカンザスやニュージャージーとは全く雰囲気や気候が違うことに、まずびっくりしました。カリフォルニアの空の透き通る青さ、雨の少なさ、冬でもコートなしで過ごせること、アジア系とヒスパニック系の人口比率が非常に高く白人の比率が少ないこと、等など。また、単身生活者の私にとってありがたかったのは、シリコンバレーの日系スーパーに行けば日本の食材の種類が非常に豊富であったこと、食材に関しては全く不自由を感じませんでした。一方、ここシリコンバレーは世界中から優秀な人材が集まりビジネスが非常に活発な地域なので、人口密度が高く家賃を含め生活費は高かったですが、その分、米国内の他の地域に比べて比較的治安は良かったです。それから、シリコンバレーで仕事を始めてしばらくしてから気が付いたのですが、シリコンバレーは元々砂漠地帯で年間降雨量が非常に少ないため(乾季の4月から11月位までの間は殆ど雨が降らない)、この地域のすべての街の緑は、遥か遠く車で数時間離れたシェラネバダ山脈から用水路で運ばれた水で維持されているそうです。夜になるといたるところの木々の根元からスプリンクラーの散水の音がよく聞こえていました。
 さて、ここサンノゼでの仕事について紹介させて頂きます。親会社で重点を置いていた経皮吸収製剤、Drug Delivery System等に特化した製剤技術を使って、新しい製品開発を行っておりました。2004年9月赴任以降、消炎鎮痛や疼痛緩和を目的とした複数の経皮吸収製剤の処方設計・開発を担当し、一部のプロジェクトは臨床移行することが出来ました。また、ナノテクノロジーを応用して中枢系鎮痛剤やradical scavengerの副作用低減を図るプロジェクト等にもchallengeしました。
 この間、もう一つの成果として、昔から温めていたアイデアで具体化したいと思っていた、イブプロフェントローチ剤の開発を行い臨床試験で喉の痛みに有効性を確認できた事があります。運よく、外部から入社してきた臨床のヘッドがこのテーマに興味を持ってくれたのがきっかけでこのプロジェクトを開始し、イブプロフェンの刺激性苦みを処方工夫により唾液に溶解した状態で100mgドーズまでほほ完璧にマスキングできました。直ぐにP1, early P2をカナダで実施し、期待通り、少数例でプラセボに対し100mg含有トローチ剤で有意に喉の痛みを軽減できる事を確認できました。この結果に基づき、現在当該処方をカバーする特許を日・米・欧を含む主要国に出願審査中で、既にオーストラリア、南アフリカ、インドでは特許が成立済です。なお、このイブプロフェントローチについては、現在ライセンス先を探していますので、ご興味のある方は私まで連絡下さい。(連絡先は最後に記載させて頂きました。)

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