基礎からのGVP【第18回】

医薬品リスク管理計画(III)

4.リスク最小化活動計画
医薬品の承認時までに得られた情報及び製造販売後の医薬品安全性監視活動により収集された安全性等に関する情報並びにそれらの情報の評価に基づき、当該医薬品のリスクを最小に抑え、ベネフィット・リスクバランスを適切に維持するために実施する個々のリスク最小化活動の全般を取りまとめたもので、全ての医薬品において通常行われる活動と、当該医薬品の特性等を踏まえ、必要に応じて追加して行われる活動とがある。
追加の措置の必要性を検討する際には、安全性監視計画においても同様であるが、以下の点を考慮してその要否が検討される。

  • 副作用が及ぼす影響の大きさ、重篤な副作用における重症度・頻度及び可逆性・予防可能性
  • 適応とする疾患の重篤性、合併症の重篤性及び背景別発現率
  • 推定使用患者数
  • 特定されたリスク集団
  • リスク最小化活動の実施で期待されるベネフィット
  • 投与期間

また、海外で使用が先行している場合は、以下の点も考慮される。

  • 海外での市販状況
  • 海外で実施されている調査・試験の結果(変更の場合、考慮すべきもの)
  • 海外との安全性プロファイルの相違
  • 海外でとられた安全対策(措置)

(1)通常のリスク最小化活動 
全ての医薬品で通常行われる添付文書を作成、必要に応じた改訂、そしてその内容を医療関係者に対して情報提供すること、また、「患者向医薬品ガイドの作成要領」及び「患者向医薬品ガイドの運用について」の通知に基づき作成される患者向医薬品ガイドを作成し、患者への服薬指導を促進することを通常のリスク最小化活動という。
(2)追加のリスク最小化活動 
通常行われる添付文書情報の提供に加えて、特に安全性検討事項について行われる医療関係者への情報提供、当該医薬品の投与対象となる患者への情報提供、当該医薬品の使用条件の設定等、個別の医薬品の特性等に応じて実施の必要性及び組合せを検討し、活動することを追加のリスク最小化活動という。
1)医療関係者への追加の情報提供 

  • 市販直後調査による情報提供 
    追加の医薬品安全性監視活動であるとともに、医療機関に対し確実な情報提供、注意喚起等を行う。 
  • 適正使用のための資材の作成及び配布 
    医薬品の適正使用を医療関係者に対し周知するための資材(適正使用ガイド、最適使用推進ガイダンス等)を作成し、配布する。 
  • 製造販売後の医薬品安全性監視活動により得られた情報の迅速な公表
    医薬品の使用に際して特段の注意が必要な場合等において、製造販売後の医薬品安全性監視活動により得られた副作用等の集積状況等をホームページにおいて公表し、適切な頻度で更新を行う等により、医療関係者に対する周知を行う。関係学会等との連携や、PMDAの情報提供ホームページにも掲載を行うこと等も考慮する。 
  • その他 
    関係学会等の第三者の作成する、安全性検討事項に関連する適正使用を目的とした、ガイドライン等を活用した情報を提供する。 

2)患者への情報提供 

  • 安全性検討事項に応じた資材の作成及び提供 
    医薬品の特性等に応じて、患者手帳等の個別の注意点等を記載した患者向け資材を作成し、提供する。 

3)医薬品の使用条件の設定 
適正使用による安全性の確保を目的として、必要に応じて使用に当たっての条件を設定する。当該使用条件を確保し得る医療機関に対して医薬品を納入する等、製造販売に当たって必要な措置を講じる。これらの条件は、医薬品の添付文書の使用上の注意への記載、承認条件としての規定、安全管理手順等の一環としての規定等の形で設定される。

  • 専門的知識・経験のある医師による使用の確保
  • 医薬品を処方する医師に対して、対象疾患の治療に関する高度な専門的知識及び経験を求めたり、また、医薬品の使用方法等に関する講習会の受講等、知識及び経験を確保するための一定の要件を定め、使用可能な医師の登録等をする。
  • 医薬品の使用管理体制の確保
  • 緊急時に十分な対応が可能な医療機関での使用、入院管理下での投与等の使用管理体制の確保を求める。特別な薬剤管理が必要な医薬品については、管理体制の確保や、医師、薬剤師等の登録をする。 
  • 投与対象患者の慎重な選定 
    投与対象となる患者を特に慎重に選定する必要がある医薬品については、患者の状態、既往歴、治療歴、併用薬等の状況を勘案した条件を設定する。特に注意を要する場合には、患者の条件への適合性に係る事前確認の確保やモニタリングの実施、医薬品の製造販売業者における投与患者の登録等をする。
  • 投与に際しての患者への説明と理解の実施
    患者側の理解が特に必要とされる医薬品等については、投与に先立ち、患者及びその家族に対して説明を十分に行い、同意を得た上で投与する旨の条件を設定する。また、特定の重篤なリスクを回避するために、患者側の理解を補助し、注意を徹底するために患者向けの資材や教育プログラム等の提供を行う。
  • 特定の検査等の実施 
    投与対象患者の適切な選択や、特定の副作用等を防止するため、医薬品の投与前又は投与後に特定の検査等を実施する旨の条件を設定する。 

 

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