新・医薬品品質保証こぼれ話【第6話】

教育訓練の実効性確保と図解の活用

医薬品の製造および品質管理の業務を的確に推進するためにGMP教育訓練が重要であることは周知ですが、その実効性の評価や確保という点においては未だ課題が多いのが現状であり、そのことは、昨今の医薬品回収に際する指摘事項からも窺えます。つまり、今なお、GMPの適切な実践ができていない理由として、人員の配置とともに教育訓練の実効性の問題がたびたび指摘される状況にあります。

この状況に鑑み、昨年施行の改正GMP省令において、“教育訓練の実効性の評価”が新たにGMP要件として規定されました。詳しくは、第19条(教育訓練)に新設された第4号の次の規定に拠ります。「教育訓練の実効性を定期的に評価し、必要に応じて改善を図るとともに、その記録を作成し、これを保管すること。」このことは、GMP査察における調査対象事項として“教育訓練の実効性の評価”がこれまで以上に重要になったことを意味します。換言すれば、この第4号の規定を法的根拠として査察が行われ、不備が認められた場合は重大な欠陥として指摘される可能性が高いということになります。

“GMP教育(教育訓練)の実効性の評価や確保”については、すでに各社で検討され、関連のSOPや記録に反映されている企業も少なくないと思われますが、その対応状況は企業により様々と推察されます。中には形式的な対応に留まっているケースがあるかも知れません。一般に、教育の効果を評価する上で最も簡単な方法は筆記試験(テスト)を行うことであり、学校教育などにおいては多くをこれに頼っているのが現状と思われます。人間の能力は多様であり、本来、様々な側面から確認する必要がありますが、結果が数値として確認でき優劣の判断が明解であること、また、公平性や公正性が保たれるという点などが、テストが能力評価に多用される理由と考えられます。

では、GMP教育の効果は何をもって計ればよいでしょう。GMPが職員に求める能力は知識そのものではなく、習得した知識を担当する業務に的確に応用・活用することにあります。よって、テストによる知識レベルの確認だけでは不十分であることは自明です。製造工程に沿った一連の操作や試験検査の手技が確実に行えるようになって初めて、教育は意味をなします。こう考えると、GMP教育の進め方や実効性評価の考え方は自ずと整理されるのではないでしょうか。つまり、各職員に求められる能力・技術を予め設定し、それに対応した教育プログラムを策定し、そのプログラムに沿った教育を実行する。そして最後に、個々の職員に求められる“知識の獲得”と“操作・手技の実践”の度合いを評価する。

実効性の評価はこの最後の段階にあたるわけですが、“知識の習得”に関しては上記のようにテストによる確認で概ね間に合うでしょう。問題は、“操作・手技”の実践力の評価ですが、基本的には次のような進め方が考えられます。製造業務においては、例えば、秤量などの単位操作の取得を目的とした訓練(OJT)の後の実際の操作に関するテストにおいて、“正しい作業流れと操作のポイント”が的確に実践できたか否かを指導者が観察して評価する。この場合、5段階などで評価ポイントと評点を設定し、点数を付与することによる数値化による評価が望まれます。

試験検査の場合も同様に、液体クロマトグラフィーによる有効成分含量の定量試験などにおいては、成分ごと或いは製品ごとに、“所定の試験の流れと手技のポイント”が正しく実行できるか否かを評価する、といったことが基本になるのではないでしょうか。なお、こういった実効性評価の手順や考え方を関連のSOPや資格認定システムに反映させておくことが重要となることは言うまでもありません。
 

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