ラボにおけるERESとCSV【第14回】

はじめに
連載第12回においてPIC/SおよびFDAのデータインテグリティ指摘を紹介し、連載第13回においてMHRA(英国医薬品庁)のデータインテグリティガイダンスを紹介した。今回は、当局査察におけるデータインテグリティ指摘への対応方法を説明する。
 
1. 規制要件の整理
査察におけるデータインテグリティ指摘への対応方法を説明するにあたり、コンピュータ化システムに対する規制要件を整理しておく。
 
(1) ERES指針、Part 11、Annex 11とGMPの関係
日欧米3極の電子記録・電子署名に関する規制(厚労省ERES指針、FDA Part 11、PIC/S Annex 11)の記載内容は異なっているが、基本的考え方は同じである。データインテグリティの査察対応方法を説明するにあたり、厚労省ERES指針、FDA Part 11、PIC/S Annex 11とGMPの関係を整理しておく。
 
図1に示すように、厚労省ERES指針およびFDA Part 11はGxPを対象としており、GMPに特化したものではない。ERES指針およびPart 11は、電子記録・電子署名に関する汎用的な規定書あるいは説明書と考えると判りやすい。つまり、ERES指針およびPart 11がそのままGMPなどの規制要件となるわけではない。ERES指針およびPart 11はGxP要件と組み合わされて規制要件となるのである。例えば、すべての電子記録に監査証跡が求められるのではなく、GMP上重要な電子記録に監査証跡が求められるのである。GMPが規制要件であり、ERES指針およびPart 11はその要件を実現するための手法であるといえる。そのため、FDA査察におけるコンピュータ指摘は、Part 11不適合ではなくPart 211 1) (cGMP)不適合として指摘されている。
 
一方、ERES指針およびPart 11は、電子記録・電子署名に関する汎用的な規定書あるいは説明書と考えられるのに対し、Annex 11はGMPに特化したコンピュータ化システムのガイドラインである。つまり、GMP業務に使用されるコンピュータ化システムはAnnex 11適合とする必要がある。ただし、Annex 11は規則ではなくガイダンスである。また、Annex 11はGMPの観点で記載されているので、ERES指針およびPart 11のように電子記録・電子署名に関する体系だった汎用的な説明はなされていない。MHRAのデータインテグリティガイダンスもAnnex 11同様、GMP適合のためのガイダンスである。
 

図1 ERES指針、Part 11、Annex 11とGMPの関係
 
 
(2) ERES指針、Part 11、Annex 11の取扱い
コンピュータ化システムをGMP適合とするためには、ERES指針、Part 11、Annex 11、およびMHRAデータインテグリティガイドラインを表1のように位置づけて取り扱うとよい。
 
表1 コンピュータ関連規制/ガイダンスの位置づけ
 規則/ガイダンス  位置づけ
 Annex 11  GMP要件(ガイダンス)
 MHRA
 データインテグリティガイダンス
 GMP要件(ガイダンス)
 ERES指針  電子記録・電子署名の汎用管理手法
 Part 11  電子記録・電子署名の汎用管理手法

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