日本の製薬業界の未来を考えたい【第4回】
■「バリデーション」という概念
GMPにおいて、「バリデーション」という概念は欠かすことのできない重要な要素です。現在では当たり前のように受け入れられていますが、GMP省令にバリデーションが導入された当初、製薬業界には大きな混乱が生じました。本稿では、その導入期における業界の混乱の一端を、記憶をたどりながらご紹介したいと思います。
平成7年3月1日、バリデーション基準とその運用方針が示され、平成8年4月1日から施行されました。これにより、既存の医薬品製造業者は、次回の医薬品製造業許可更新までにバリデーションを実施していなければ、業許可の更新ができないという厳しい条件が課されました。つまり、バリデーション未対応の場合、医薬品の製造が不可能となり、廃業を余儀なくされることになる状況でした。
当時、私は当局に在籍しており、平成8年4月1日以降に医薬品製造業許可の業許可更新を迎える事業者への対応を検討しました。当時の許可有効期間は現在と異なり5年間であったため、結果として平成13年3月30日にはすべての製造業者がバリデーションに対応していることとなります。そこで、バリデーション対応が順調でない事業者を優先的に支援するため、バリデーション支援事業を立ち上げ、衛生研究所の研究員の協力を得ながら、支援に応募してきた製造所を幾度となく訪問するなど、対応を進めていました。
医薬品製造所は散剤、錠剤、カプセル剤、液剤、注射剤だけではありません。当時私が担当したものの一つには、生薬(煎じ薬)がありました。「生薬の刻み」と呼ばれる工程、つまり生薬の葉を切り刻んで作る「煎じ薬」です。生薬は生産地や生育期間の天候等に左右されるため、サイエンスベースを要求するそのバリデーションには、大変な苦労を伴いました。
まずは、製造業者の皆さんに分かりやすくバリデーションを説明しなくてはなりません。もちろん私自身もバリデーションを十分に理解し、知識を得てお客さんにご案内することに大変苦労をしました。
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