初めてのGDP(医薬品適正流通基準)【第4回】

1.品質システムとは?

GDP ガイドラインでは、まず、第1章「品質マネジメント」から品質システムという言葉が出てきます。品質システムとは一体何なのでしょうか。品質システムという考え方は元々ISO 9001の考え方なのですが、現代の品質保証を考える上で非常に重要なコンセプトです。医薬品に関しても、このISO 9001に基づき厚労省から「医薬品品質システムのガイドライン(ICH Q10)」が発出されています。
要点を言いますと、製品の品質というものは、その物自体の品質だけではなくて、それが品質システムの上で出来上がった、ということが重要なのです。いわば、「製品そのものの品質」と「品質システムが問題なく機能していること」が車の両輪のように結びついて初めて製品の品質が保証できるわけです。 
GDP ガイドラインでは「卸売販売業者等は・・・品質システムを維持すること。」(第1.1条)とされており、品質システムは以下を保証することとして次の要件が示されています(第1.2.7条)。
①    医薬品はGDPの要求事項に適合するよう仕入、保管、供給すること。
②    経営陣の責任が明確に規定されていること。
③    製品は、速やかに正当な受領者へ納入されること。
④    予め定められた手順からの逸脱は記録され、調査されていること。
⑤ 品質リスクマネジメントの原則に従い、逸脱を適切に是正し、予防するため、適切な是正措置及び予防措置(Corrective Action and Preventive Action 以下:CAPA)が講じられていること
さらにもう一点、変更管理システムを整備することという規定があり(第1.2.6条)、これもまた品質システムの要件となります。 
一つ例をあげたいと思います。逸脱(④)について考えてみましょう。例えば、倉庫で保管温度が管理温度範囲から外れたとします。そうすると担当者はそのことを責任者に報告し、その後、温度が外れた原因を調査しなければなりません。原因はエアコンの不調だったのかもしれません。その原因をもとに逸脱の再発防止を図る必要があります。これが⑤で出てきたCAPAですね。また管理温度範囲外となった温度によって保管されている医薬品の品質に問題あったのか、なかったのかについても検討しなければなりません。原因を調査し再発防止を図りながら、その医薬品の品質に問題がないことを確認できれば、責任者の承認を得て、医薬品をめでたく出庫することになります。またその過程で、このような逸脱があったことを倉庫業務の委託元である物流業者あるいは製薬企業に報告し、その判断を仰ぐ必要も出てきます。
ここで申し上げたかったことは、この逸脱の例でご紹介したような手順、業務の流れ全体が定められており、それが文書化されているということでして、そういうことが品質システムの一つの姿なのです。
品質システムの要素は逸脱だけではありません。先述の①~⑤に加えて、この要素を考える上で GMP 省令が参考になります。なぜ GMPと思われる方もいらっしゃるでしょうが、近年GMDPと呼ばれることもあってGMPとGDPは密接な関係があります。そこで GMP省令を見ると次の9つの品質システム要素が示されています。
すなわち、出荷管理、バリデーション、変更管理、逸脱管理、品質情報、回収処理、自己点検、教育訓練、及び文書管理の9つです。GDPガイドラインよく見ていただくと、この9つの要素がすべて含まれていることがお分かりになると思います。 
なお、GDPガイドラインでは、この品質システムを含め、外部委託業務の管理や品質リスクマネジメント等の要件も含めて品質マネジメントシステムと呼んでいます。品質マネジメントシステムとは、いわば、広い意味での品質システムであるということができます。
ここまで述べてきた品質システムという考え方はGDPの基本中の基本です。しかし、わが国ではGDPといえば温度管理のことばかりが話題となる傾向があるように感じています。GDP =温度管理というような誤解すらあるようで、温度管理はGDPの要件の一つに過ぎないのですが、特に品質システムに関する議論は疎かにされているのではないでしょうか。
今年の2月に大阪府よりGDPガイドラインの解説書が発出され(ネット上で容易に検索できます)、行政が本格的にGDPへの取り組みを始めたという点で大いに注目されました。この解説書では、GDPの背景となる上位の法令についても各条で言及されており、非常に参考になります。ところが、この解説書の中でGDPとして対応すべき事項の優先度が示されているのですが、倉庫や輸送に関する温度管理が高い優先度であるのに対し、品質システム(より広く、品質マネジメント)の優先度は低く示されています。非常に残念なのですが、現在のわが国のGDPに対する意識や取り組みの現状を示しているように思われます。温度管理も品質システムという背景、土台があってこその事案であることをよくよく理解すべきであると考えます。

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