【第2回】デジタルヘルスで切り拓く未来

「デジタルヘルスで何を叶えるのか」

●要旨
 社会的な変化に対応すべくデジタルが必須という声の一方で、「デジタルがあれば良い」ではないという認識も大切です。特につなぎ目のところに目を配る必要があります。また、サービスや品目の前にコンセプトとしっかり向き合いましょう。単に審査のためではなく、理解を得て愛用されるための仕掛けです。人工知能を活用するとしても人間との関係性に目を向けておく必要があります。

●はじめに デジタルであれば良い、ではない
 電子カルテは、今でも全国に普及してはいません。カルテを電子化するにあたり、医療従事者が必死になってスキャナーでカルテを読み込んでいた時期もありました。現在は、電子カルテのプラットフォームの上で読み書きができ、連携もできる時代です。しかし、今でもデジタルになったから良いとしている人が多いことは残念です。デジタルにしたから何かが解決するのではなく、何がしたいのか、どうあれば私たちの医療はよくなるかを考えなければなりません。今の私たちの身の回りには電子機器がたくさんありますが、ときに紙と鉛筆が登場します。もちろん、紙によって確実に伝え、確認できることは少なくなく、意義があります。しかし、なぜ、紙を使うのかを立ち止まって考えることが大切です。
 デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する社会ですが、医療、ヘルスケアの領域は遅れています。すでに考える時間が足りないほど、人が足りないという面もありますが、まずは考えてこなかったところに問題がありそうです。つぎはぎとやっつけ仕事が積み重なり、つなぎ目の悪さから、DXについて期待を持てないのかもしれません。

<図表> コンセプトから妥当性評価、価値へ

1 コンセプトを大切にする
 まずはコンセプトをしっかり持つところから始めなければなりません。デジタルは魔法の杖ではなく、何を解決するか、あるいは、どうだったら私たちは嬉しいのか、というビジョンを持ち、コンセプトとしてまとめて、実践していく必要があります。
 医療機器であるプログラム(SaMD)の製造販売承認審査に関して、PMDAの職員が講演することが増えています。その際に、コンセプトを大切にするのは、SaMD特有のものではなく、どんな品目でも大切ですと繰り返し伝えています。医療現場がその製品やサービスを選び取り、愛用するにも、コンセプトを重視します。医療関連製品やサービスに限らず、コンシューマー製品、サービスなどでも同じです。製造販売に関する審査においてもコンセプトが重要です。開発の経緯の中でコンセプトを読み、審査の方針が決まります。もちろん、効率の良い開発のために、コンセプトをベースに妥当性検証などの計画を立てる必要があります。
 SaMDに特殊性があるとしたら、これまでにないような「変化」があることでしょう。どんな医療製品にも変更の必要性を生じることがありますが、SaMD、人工知能を用いる時においては、変化のあり方に注意を払う必要があります。なぜ変化するのか、変化の範囲はどうなのかを考えるにあたって、根本はコンセプトのところに立ち返ります。

 

 

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