基礎からのGPSP【第6回】

~安全性監視活動計画の作成①~

はじめに
開発時の情報を踏まえ、開発時の問題点、類薬や海外での使用状況から特定できた問題点、推測できる問題点や不足している情報等を明確にし、確認・充足するためには、通常実施される安全性監視活動とともに、追加の安全性監視活動として適切な調査・試験を組合せ、全体的に計画する必要がある。この計画は、遅くとも承認申請時点ではその骨格は明らかとなってなければならず、承認審査の段階で、リスク最小化活動等を含め全般的なリスク管理計画を示し了解を得なければならない。そのうえで、個々の調査・試験がその計画に基き、策定されたものでなければならない。これらの策定を実務の上でどのように進めていくかを示す。
 
1. 安全性監視活動の検討
承認時までに収集・確認できなかった情報等を製造販売後に日常の診療における使用実態下の情報として、追加収集・再確認する必要性はこれまでに示したとおりである。製造販売後に収集・確認しなければならない情報を明確に示し、これらの情報を如何にして的確に収集するかの調査・試験等の実施の全体像を取りまとめたものが、「安全性監視計画」である。
欧米にてリスクマネージメントプラン、ファーマコビジランスプラン等として検討されてきて、ICHにおいてもE2Eとして提唱され、各極で正式に批准され実施方法等が検討され共有されている。国内においても「医薬品安全性監視の計画について」として批准通知が発出され、その趣旨を取り入れることにより、安全性監視計画の内容の充実が図られてきた。
また、開発初期の段階から治験薬に関する一連の情報収集計画の延長線上に承認後の情報収集を組入れ、CTD(承認申請資料概要)のM1.11の項にあるように承認申請時に、リスク最小化計画を含めた医薬品リスク管理計画書を添えて提出するなど、製造販売後の医薬品適正使用のために様々な計画設定がなされている。
 
1.1 検討事項
申請のための関連資料を精査して、監視活動計画概略案を検討していくが、以下の例のような手順で情報を整理し、抽出してみる。
(1) 開発時における問題点
重篤な副作用が発現したり、特定の副作用の発現率が高かったりしたが、その理由は明確になっているものやそうでなかったものが含まれている。被験者の安全性確保の観点や試験結果の評価を明確にするために選択された集団のみを対象とした情報である。そのため、非選択集団の安全性に関する情報は不足している。
(2) 類薬での問題点
・類薬では高頻度で発現することが知られている副作用が実施した臨床試験では
 あまり報告されていない。
・特定の患者群において類薬では慎重投与になっているが、本剤での影響はない
 と考えている。
・類薬では相互作用があるとして併用注意となっている薬物群があるが、本剤で
 はその影響はないものと考えている。
以上のように、類薬では問題となっていることが、本剤においては本当に解決されているのかを確認する必要もある。
(3) 諸外国での問題点
国内で実施した臨床試験では発現しなかったが、海外での臨床試験や市販後の使用において報告されている重篤な副作用がある。
そして、それぞれの情報源においてICHE2Eにて定義されている以下の分類で、
・重要な特定されたリスク
・重要な潜在的リスク
・重要な不足情報
という観点から情報を整理し、必要な安全性や有効性に係る検討事項として取りまとめる必要がある。
次に、取りまとめた検討事項をどの方法を選択して必要な情報を的確に収集するかを決めていかなければならない。検討事項によっては、複数の事項が一つの調査で検出できる場合もあるなど、その組合せや、実施順序等によっては、より効率的な方法も考えられることから、その点も十分考慮して調査・試験等の全体的な計画を策定し、監視計画として明確に文書化しておく。
このようにして、製造販売後に如何にして製品の安全性プロファイルを確立していくかを明らかにし、社内はもとより行政当局との検討に際し、共通の認識として捉えること、そして医療関係者に協力を仰ぐ資料として活用できることが安全性監視計画作成の一番のメリットといえる。
 
1.2 安全性監視計画の概要案の検討
監視計画の概要を検討するのに必要な情報を得るために、申請プロジェクトとの交流及び申請資料等の精査が必要であることは既に示したとおりである。それらの経過の中で、下図に示す観点・目的で、資料を取りまとめて検討してみる必要がある。
(1) 開発時における問題点
重篤な副作用が発現したり、特定の副作用の発現率が高かったりしたが、その理由は明確になっているものやそうでなかったものが含まれている。被験者の安全性確保の観点や試験結果の評価を明確にするために選択された集団のみを対象とした情報である。そのため、非選択集団の安全性に関する情報は不足している。
 

 
一見、これらはバラバラな項目であるとか、重複した情報であるように思われるが、「開発コンセプトを知ることにより、申請薬の医療上の存在価値をどの様に確認していくべきか」、「臨床試験において国内、国外の実施状況により、新たに日本人にとって必要な情報は何なのか、開発段階で知りえなかった情報の範囲は何なのか、予測される情報は確認する必要があるのか、潜在的な問題の可能性の有無はどうか」、「同種同効薬の精査により、他剤での問題点が当該薬ではどうか、また、市場規模を知ることにより実施可能な調査・試験」などの検討根拠として重要な情報なのである。
これらの精査した情報から、さらに次ページ図の観点で情報を整理することが重要であり、最終的な計画案の作成に大きく影響する。

 

 

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