GMPヒューマンエラー防止のための文書管理【第49回】

リスク
1.100年に一度
地球温暖化、異常気象が叫ばれ、大きな災害が頻発している。以前、100年に一度発生する災害の対策が必要かなど、ある議員が言った言わないと騒がれたことがあった。製薬業界もコロナ禍で、ワクチンの副反応の問題や治療薬の開発等、リスクについてマスコミ等で取り上げられている。副反応や副作用がまれ(数十万〜100万分の1の確率)にしか発生しないとしても副反応や副作用が生じた患者にとっては100%である。医師は、効果効能であるメリットと副反応や副作用であるデメリットのバランスを取って、治療に用いることになる。医薬品は、副反応や副作用が100%ないものもないし、効能効果が100%あるものもない。人種、性別、食習慣、体格等の影響を受けるし、個人差にもより、薬の効き目と副作用の発現や程度は異なる。医師は、それを見極め、疾病の治癒にあたらなければならない。しかし、患者においては、数十万〜100万分の1の確率と言われても、不安になる。その副反応が重篤なもので、死亡に至ることや生涯後遺症に苦しむことになるかもしれなければ、なおさら許せないことだろう。まして、ワクチンのように健康時に摂取して、副反応が生じるかもしれないなら、不安になるのは当然ともいえる。医師や薬剤師は、確率だけでなく、その不安を取り除くことが必要である。
GMPにリスクマネジメントの考えが取り入れられて久しいが、GMPに携わる多くの方々の中にも、GMPに関連するリスクは0(ゼロ)にしなければならないと思う方も少なくない。薬事規制は、薬害との闘いと言える。副作用の問題だけでなく、品質問題も含め、規制緩和が進む中でも、製薬関連業界に対して規制はますます厳しいものになっている。その事象が健康被害、まして、死亡に至るような事象を招くことは例え、100年に一度であっても許されないが、そのリスクにより、患者の生命を脅かすことがなければ、容認できるリスクもある。回収事例で、品質へ影響しないとされていることも多い中、しっかりとリスクアセスメントをする能力が製薬企業には必要である。
ICH Q9品質リスクマネジメントに関するガイドラインの付属書Iに示されている欠陥モード影響解析(FMEA)では、
の計算に基づき、対応すべき順位を定めることができる。しかし、重大性や発生確率、検出率を見誤るとその評価結果が想定外なものとなってしまう。GMP違反の事例であった水虫薬に睡眠導入剤混入事例を考えても、混同や取り違いの発生リスクを考えたとしても、睡眠導入剤が混入して、交通事故を招く事態まで想定することは困難であろう。高活性等の封じ込めが必要な医薬品の混入に対しては、重大性として高い点数としても、それ以外の医薬品が混入した場合の重大性の評価点数は低いかもしれない。発生確率が100年に一度と判断した場合、リスクの低減策の必要性は却下されるかもしれない。どのような医薬品が保管され、混同、取り違いが起こる可能性のある医薬品の最小有効濃度を把握し、交差汚染が発生した時に、事故が招く重大性や発生確率の可能性を解析しなければならない。ジェネリック製薬企業では取扱品目も多く、それぞれの品目について十分な解析がされているか不安である。各製薬企業は、自身の製品について、十分な解析に至急、取り組む必要がある。
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