業界雑感 2017年7月

 40年近く前、新入社員として入社して最初にセファメジンの製剤工程に配属された。当時のセファメジンは現在の無菌粉末充填ではなく、凍結乾燥で製造していたのだが、作っても作っても需要に追い付かず、さりとて凍結乾燥工程で2泊3日のリードタイムをそれ以上短縮することもできず、どんなに頑張っても凍乾庫一台あたり週3ロットの生産が精一杯だった。ボトルネックが凍結乾燥工程であることはわかっているので、増産のためのアイデアとしては連続化しかないと思い考えてみたのがバッチ連続だった。凍乾庫を並べて順番に凍結乾燥工程をスタートすることで、一日4-5時間しか稼働していなかった充填系列はその能力を最大限に活用できるだけでなく、負荷変動の大きい冷凍機や真空ポンプも連続稼働による安定化が図れる、と考えたのだが、バイアルの搬送、凍結乾燥工程としての高真空の維持管理、勤務体系も当時では考えようもなかったシフト勤務への変更など、課題も山ほどあって思い付きの域を脱しなかった記憶がある。

 次に連続化の検討に取り組んだのは、30年くらい前、アンプルの連続滅菌だった。アンプルの後滅菌工程もオートクレーブによるバッチ処理なので、この滅菌を連続化すれば生産能力の大幅な向上が期待できる。無菌バリデーションの考え方もその当時では定着していたので、F₀=12を確保し薬液の安定性に影響がなければOKとし、当時なにかで知ったフッ素系不活性液体(商品名:フロリナート)を135℃くらいに加温しその中を連続的に1分程度通してやれば、と考えた。このアイデアは実際にフロリナートを購入し実験をしていた記憶もあるので (ずいぶん突拍子もないことを自由にやらせてもらっていたいい時代だったのだと、いまさらながらに思うところである) かなり本気で取り組んでいたのだが、時を同じくして超音波による連続滅菌機が発売され、先を越されたと悔しい思いをしたものだった。その後アンプル製剤そのものの将来性が見えない中、生産能力向上の必要性もなくなってきて、この検討も結局それきりになってしまった。

 昔話はさておき、今製剤研究の分野では固形製剤の連続生産についての議論が盛んである。初期の開発において少ない原薬量での検討が可能で、バッチサイズに依存しないためスケールアップの検証が不要であることや、PATを前提とした連続した品質モニタリングが可能となることなど、製剤開発の面からみたメリットが強調されている。製薬メーカーのみならず、製剤機器メーカーもシステム開発に積極的に取り組んでおり、既に製造承認を受けた製品もあるということであれば、業界としての流れは止まることはないのだろう。ただ、ロットや工程管理、GMP上の指図と記録の整合性、品質試験及び管理、異常・逸脱対応、製造コストやその管理、製品需要と生産計画の問題等、実際の生産段階でこの技術を採用するとなると、考えなければならないポイントが山ほどあるように感じている。それらの課題に関しての議論が現段階ではほとんど聞かれないことに危うさを感じるのは杞憂というものだろうか? 。

※この記事は「村田兼一コンサルティング株式会社HP」の記事を転載したものです。

執筆者について

経歴 ※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

連載記事

コメント

コメント

投稿者名必須

投稿者名を入力してください

コメント必須

コメントを入力してください

セミナー

eラーニング

書籍

CM Plusサービス一覧

※CM Plusホームページにリンクされます

関連サイト

※関連サイトにリンクされます