GMPヒューマンエラー防止のための文書管理【第65回】

判定

1.サッカーワールドカップ1mmの判定

 サッカーワールドカップは、アルゼンチンが36年ぶりの優勝で幕を閉じた。決勝戦は、PK戦までもつれる緊迫したゲームであった。日本チームの活躍もドイツ、スペイン等の格上チームを相手に勝点を上げるなど、目標のベスト8入りを果たせなかったが、日本中に感動を与える試合を繰り広げた。チームマネジメントとして、森保監督の戦略をGMP活動としてのマネジメントに活かすことも可能ではないかと思うが、今回は、日本のスペイン戦での後半、三笘選手のピッチから出かかったボールを折り返し、ゴールにつなげた際の判定について考える。ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)がゴールライン付近を撮影するカメラの画像を2分半の時間を要して確認した。競技規則では「グラウンド上または空中でボールがゴールラインまたはタッチラインを完全に越えた時」にアウトオブプレーになると記されている。FIFAは「証拠を集めた結果、ボールの全体が線の外には出ていなかった」との声明を出した。いくつかの写真が報道されていたが、見る角度やタイミングによりボールがアウトしたように見えるものもある。規則通りの判定をするだけだが、その判定が正しく判定するために、どこから見るのか大事な点となる。写真そのものが信頼できるか疑問の声もある。スポーツの試合では、後日判断しましょうと結論を先送りできず、その場の判断が求められる。その判定と根拠となる写真は、データインテグリティとして信頼されるべき管理が必要である。

<判定写真1)

 以前、私は藤沢市野球協会の審判員をしていた。審判は、正しい判定をするためにそのポジションを確保しなければならない。基本的に、塁上の判定では、その送球に対して、直角になるようなポジションをとる。例えば、ホームベース上では、内外野からの送球とランナーのベースへのタッチ、キャッチャーのランナーへのタッチが見やすいポジションとして、3塁からホームベースラインの延長上の位置で確認できるようにする。しかし、キャッチャーの背中越しでタッチの確認ができないこともあるが、ランナーを待ち受けられるポジションが基本的には見やすい位置となる。プロの世界では、ビデオ判定も取り入れられているが、判定者の位置取りも常に考えるべきである。
 多くのスポーツにビデオ等の判定を用いられるようになったきた。しかし、その映像に修正等を加えられることがないことを証明できなければならない。ワールドカップにおいても、写真そのものに対して疑念を抱く声があった。GMPにおいて、生データの取扱いが重要である。生データには、装置からプリントアウトされるものや作業者がその場で装置が示した値等をメモ等に記載したもの、写真など多岐にわたる。作業者が記入したものはその値が正確なものである根拠を示すことが難しい。写真もいろいろと編集が可能なことが多く、写っていたものを消すことができる機能もある。そのため、写真に編集等の手を入れていないことを証明するためにも、撮影者が特定できるようにしておく必要がある。その上で、撮影者が編集等の修正をしていないことを明言することも場合により必要であろう。
 いずれにしても、判定には根拠たるデータが必要で、そのデータが改ざんされていないことを証明することがデータインテグリティを確保することになる。
 

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