スタートアップバイオベンチャー経営(栄一の独り言)【第5回】

2022/05/20 その他

今回は、「核酸医薬の創薬・開発を目指すスタートアップベンチャー企業へ」と題してその動向について。

今回は、「核酸医薬の創薬・開発を目指すスタートアップベンチャー企業へ」と題してその動向についてお話をします。
 

核酸医薬品の動向

1.    遺伝情報に基づいた創薬設計アプローチが易しいことから核酸医薬品の需要拡大が期待されています。核酸医薬品は高い標的特異性、有効性を持ち、従来の医薬品では標的に出来なかったDNAやRNAを標的とすることから、新しい作用機序による画期的な医薬品の開発が期待されています。従って、核酸医薬は、低分子医薬、抗体医薬に続く、第3の創薬モダリティの地位を確立しつつあります。

2.    核酸は体内に投与すると直ちに核酸分解酵素によって分解されてしまいますので、生体内での安定性が著しく低いなど様々な課題により実用化は困難であると考えられていましたが、種々の化学修飾により酵素に対する抵抗性を付与することが可能になり、核酸を医薬品として用いることが可能となりました。次に問題となるのが、「いかに患部まで届け、細胞内に送達するか」という課題です。これを克服するのが「核酸デリバリー技術(DDS)」です。LNP(Lipid Nanoparticles encapsulating siRNA:siRNA内封型脂質ナノ粒子)やGalNAc(ASGPR: アシアロ糖タンパク質受容体と結合し、ASGPRを多く持つ肝細胞へ集積し、この受容体から肝細胞へ取り込まれる)等の核酸デリバリー技術の進展により、核酸医薬品の実用化が進んでいます。

3.    2021年12月現在、日米欧で承認された核酸医薬品は15品目あります。また、開発段階にある化合物も150品目以上となり、大きな注目を集めています。そのきっかけとなったのが、2016年に上市されたIONIS社が開発した脊髄性筋萎縮症治療薬スピンラザの成功です。進行性の遺伝性神経難病で通常2歳程度までしか生きられない患者の症状が年間2回の投与で大きく改善したため、大きなインパクトがありました。 (参照:表1 承認された核酸医薬品)

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執筆者について

山口 栄一

経歴

A1 Partners 代表。
九州大学大学院にて薬学博士取得。塩野義製薬およびバイオベンチャー企業で20年超に及ぶ事業開発経験を有する。同社事業開発部/経営企画部 部長を歴任。海外事業経験も豊富で、シオノギシンガポール初代社長、Shionogi Qualicaps, Inc. (米国ノースカロライナ州) Vice President、及び、Shionogi New York Ltd. で臨床開発に従事した。 バイオベンチャー企業で、取締役兼社長執行役員を勤め、バイオベンチャースタートアップ企業の経営経験を有する。日本ファルマアライアンス協会 初代会長として製薬業界へアライアンスマネジメントの普及に貢献した。感染症関連官民連携会議(座長:尾身 茂先生)で、「民」側の代表として、副座長を務めた。日本製薬工業協会 国際委員会 幹事としてグローバルヘルスにも従事した。Blockbuster Tokyo 2021のメンターに選出された。更に、厚生労働省委託 医療系ベンチャー・トータルサポート事業、MEDISO (Medical Innovation Support Office)のサポーターに採択された。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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