ラボにおけるERESとCSV【第63回】

7.483における指摘(国内)
前回より引き続き、国内企業に対するFDA 483に記載されたデータインテグリティ観察所見(Observation)の概要を紹介する。
 
■ TT社 2018/7/3 483
施設:製剤工場
 


Observation 4
コンピュータに投入したデータのバックアップが維持されていない。
とくに;
クロマトグラフィのデータや、スタンドアロン機器が生成した計算結果がバックアップされておらず、オリジナルデータを失った場合にデータを復旧できない。

★解説:
バックアップをしていないとの指摘は大変多く、データインテグリティ指摘の約20%においてバックアップを指摘されている。特にネットワークに接続されていないスタンドアローン機器において指摘されやすい。LIMSやCDSなどのサーバーシステムは自動バックアップしているのが普通であるが、バックアップを担当しているIT職員がGMP教育を受けていないと指摘される。連載第61回のQQ社Observation 1とObservation 2を参照されたい。

■ UU社 2018/7/6 483
施設:製剤工場    

 
Observation 1
SSTがパスした後で、不明の不純物、既知の不純物に対し手動積分がなされた。

★解説:
指摘された状況が読み取れないが、HPLCにおいてSSTがパスした後に実施した正式測定における手動積分/再解析について指摘していると思われる。SSTがパスしたということは、機器は正常であったということである。つまり、不明の不純物、既知の不純物の自動分析は正常に行われたはずなのに、手動積分が行われている。おそらく、その手動積分を実施した正当な理由が記録されていなかったのではないかと推測する。シーケンスにより自動分析した後にシングルインジェクションにより再測定を行った場合も、シングルインジェクションの正当な理由を記録しておかないと指摘される。

FDAのデータインテグリティガイダンス(正式版)に以下の記載がある。
  14   クロマトグラフィを再処理(手動解析/再解析)した場合、その最終結果
    だけを保存することでよいか?
    •    分析法は正確であること
    •    再処理が頻繁に必要となるような分析法であってはならない
    •    クロマトグラフィを再処理する場合、手順書を遵守して再処理を
      行うこと
    •    クロマトグラフィを再処理した結果は保存しレビューすること
    (§211.160、§211.165(c)、§211.194(a)(4)、§212.60(a)を参照)

クロマトグラムの手動解析/再解析手順書に以下を規定するのがよい。
 ◆   手動解析/再解析を開始してよい条件
 ◆   手動解析/再解析を実施した理由を記録すること
 ◆   初回解析を含め電子記録を維持すること
 ◆   データレビューにおいて、手動解析/再解析の正当性を電子記録により
   評価し記録すること

FDAは安定した分析法による自動分析を期待している。手動解析/再解析があると、都合のよいデータを得ようとしているのではないかと疑う。従って、手動解析/再解析の結果はクロマト画面を拡大するなどして手動解析/再解析の正当性を精査する必要がある。
(以上、連載第54回HH社のObservation2 ④の解説を再掲載)

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