エッセイ:エイジング話【第13回】

ステンレスと寿命

 蒸留器の缶体は経年劣化により異物流出が起こることがあります。外見はピカピカに輝いていても、内部は過酷な条件に曝されているからです。蒸留器内で発生するピュアスチームは、缶体側から見ると腐食させるガスと認識する必要があります。
 炉内を1000℃以上の高温にする電気炉を、陶器つくり工房で使っていますが、断熱材の外側を囲んでいるステンレスフレーム表面は、使うたびに変化を起こします。使う前にはブラシで埃を払いウエスで拭いておいても次第に劣化が起こります。
 ステンレス材は、長く高温に接していると赤茶けた色を呈することがよくあります。この色着いた箇所は、直後に綿布で軽く拭くと除去できるのですが、放置すると暗赤色を呈するようになり次第に拭き取れなくなってゆきます。
 ステンレス表面に電解研磨を施すことが普及する以前には、注射用水を入れるステンレスタンクを新設したとき、特に蒸気滅菌したあとには、中には入って綿布で拭き取り作業をしたものです。
 これは「リュージュ」と呼ばれ、熱に曝されるステンレス材表面ではしばしば現れますが、この発生する要因は、「外部から持ち込まれたのか」、「表面近くに付着しているのか」、「ステンレス材内部から溶出したのか」明確に区別して要因解明することが叶いませんが、供給水由来とステンレス材由来の両方の可能性を示唆することが調査の結果に判りました。
 この発見にはかなり細やかな点検作業が必要であり、一定期間を定めて、CIP(定置洗浄)することを制度化している現場もあります。さらには、洗浄回数を予め定めて本体を更新することを、内規化されている現場もありました。長く過酷な条件に曝されることとなる蒸留器に対して、現場ごとに水質を悪化させないような対応がなされておりました。

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