ラボにおけるERESとCSV【第48回】

7.483における指摘(国内)
前回より引き続き、国内企業に対するFDA 483に記載されたデータインテグリティ観察所見(Observation)の概要を紹介する。
 
■Z社 2017/7/14 483
施設:原薬工場


Observation 1
分析機器のバリデーションが不十分である。特に、
①コンピュータのソフトウェアおよびハードウェアが分析に適していることを、IQおよびOQにより証明するよう規定されている。しかし、その規定に適合したバリデーションを実施していない。
②データに対する権限のないアクセスおよび変更を保護していない。ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合プラズマ)分析ソフトウェアは監査証跡機能を持っていない。
③ICPソフトウェアがアップデートされたが変更管理されておらず、照査・承認されていない。

★解説:
①分析機器供給者のIQ、OQパッケージによりバリデーションを行うことがある。その場合、バリデーション計画書(プロトコル)はユーザーが照査・承認すること。また、バリデーション報告書もユーザーが照査・承認すること。ユーザーが供給者にIQ・OQを実施させさたが、バリデーション計画書/報告書にユーザーが署名していないというFDA指摘がある(483-2016/3/11 仏)。

②分析機器が生成するデータの真正性保証の要件は、電子記録の真正保証の要件と同じであり、セキュリティ、監査証跡、バックアップである。これらの要件については連載第2回と連載第3回を参照されたい。また、連載第31回の図3「真正性に関するWL指摘例」も参照されたい。連載第36回のK社Observation 1に対する解説も参照されたい。セキュリティ機能および監査証跡機能を具備していない分析機器はFDA査察において指摘を受ける。FDA査察があり得る場合は、これらの機能を持つ分析機器に更新してことをお薦めする。

③変更管理はコンピュータ化システムの運用管理における基礎である。変更管理の基本フローは、「変更申請→変更許可→バリデーション計画書の照査・承認→変更実施→バリデーション実施→バリデーション報告書の照査・承認→記録のアップデート→運用再開」である。また、年次品質レビューにおいてシステムの変更有無を確認し、システムが変更されている場合は変更時のバリデーションが適確になされていることを確認する。システムの変更が無かった場合は、ソフトウェアの再バリデーション(定期バリデーション)は不要であるが、その旨記録しておくこと。

Observation 2
QC手順が文書化されていない。特に;
①ICP分析機器のようなコンピュータ化システムに対しバリデーション計画を作成するよう規程していない。
②データに対する権限のないアクセスおよび変更を保護するよう規定していない。
③データに対し監査証跡を残すよう規定していない。

★解説:
①コンピュータ化システム管理規定の対象となるシステムは厚労省「コンピュータ化システム適正管理ガイドライン」の「Q&A集」 Q5~Q24を参照されたい。
http://www.it-asso.com/gxp/regulations/tekiseikannri-QA.pdf

②③厚労省「ERES指針」は電子記録の真正性を保証する要件として、アクセス管理、監査証跡、バックアップをあげている(本連載第2回参照)。一方、GMP施行通知の「35.その他(電磁的記録等について)」においてERES指針の要件がさらに具体的にGMPの要件として記載されている(図22参照)。このGMP施行通知は拘束力が強いものであると、PMDAが説明している(図23参照)。

GMP施行通知:
薬食監麻発0830第1号  平成25年8月30日 (2013年) 
医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令の取扱いについて
http://www.it-asso.com/gxp/regulations/T130830I0020.pdf

図22 GMP施行通知 35.その他(電磁的記録等について)

図23 GMP施行通知の拘束力

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