【EMA発出/曝露限度設定ガイドラインQ&A集ドラフト他】ASTROM通信<115号>

株式会社プロス発行のメールマガジン『ASTROM通信』のバックナンバーより記事を抜粋し、一部改編をしたものを掲載いたします。

本稿は【2017.02.01】に発行されたものです。
記事の原著は、こちらでご確認下さい。 ASTROM通信バックナンバー


こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

厳しい寒さの中でも梅の花がちらほら咲き始め、春が待ち遠しいこの頃ですが、いかがお過ごしですか?

さて、今回は下記3点を取り上げたいと思います。
1)日本国内で「ハーボニー配合錠」の偽造薬が発覚したこと
2)2016年12月15日にEMAより発出された「共有設備での異なる医薬品の製造におけるリスク識別の ための衛生に基づく曝露限度設定ガイドライン」に関するQ&A集”のドラフトについて
3)PIC/S GMPの一部改訂について

最後までお付き合いいただければ幸いです。


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1)「ハーボニー配合錠」の偽造薬が発覚したこと
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ご存じの方も多いと思いますが、C型肝炎治療薬の「ハーボニー配合錠」の偽造薬が奈良県内の薬局チェーンで調剤され、患者に渡るという事件が発生しました。薬局チェーンは、製造販売元のギリアド・サイエンシズ指定の医薬品卸を通した正規ルートとは異なるルートから仕入れたそうです。
その後の東京都の立ち入り調査で、都内の2カ所の卸売販売業者から新たに偽造品ボトルが見つかったそうです。
今回見つかった偽造品は正規のボトルに入っていたものの、本来流通することがないボトル容器単体の状態で流通し、外箱や添付文書がなかったそうです。
にもかかわらず、途中で止まることなく患者に渡ってしまったというのは衝撃的な話です。

海外では偽造医薬品の流通が大きな問題になっていますが、これまで日本では製造販売業者->医薬品卸->医療機関・調剤薬局->患者のサプライチェーンが厳格に管理され、偽造医薬品の流通が非常に少ない状況でした。しかし、ついに日本でも偽造医薬品が流通する時代に突入したのかもしれません。

■出典
医薬品の適正な流通の確保について(厚労省)
 http://www.pmda.go.jp/files/000215920.pdf
C 型肝炎治療薬「ハーボニー配合錠」の偽造品への対応について(厚労省) 薬事日報
 2017年1月20日号、1月23日号


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2)製造におけるリスクベースの交差汚染防止の実現と、「共有設備での異なる医薬品の製造におけるリスク識別のための衛生に基づく曝露限度設定ガイドライン」に関するQ&A集ドラフト
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2016年12月15日にEMA(European Medicines Agency:欧州医薬品庁)より、14項目からなるQ&A集のドラフトが発出されました。長い名前ですが、“製造におけるリスクベースの交差汚染防止の実現と、「共有設備での異なる医薬品の製造におけるリスク識別のための衛生に基づく曝露限度設定ガイドライン」に関するQ&A集”(Questions and answers on implementation of risk based prevention of cross contamination in production and ‘Guideline on setting health based exposure limits for use in risk identification in the manufacture of different medicinal products in shared facilities(EMA/CHMP/CVMP/SWP/169430/2012))というものです。
本ドラフトは、2017年1月から公の協議を開始し、2017年4月30日までコメントを募集されるそうです。

EUが医薬品製造業者に対して発行するノンコンプライアンスレポート(Non-Compliance Report)には、交差汚染に関する不備の指摘が多いことから、今回はまだドラフト版ではありますが、EUの交差汚染に対する考え方を知る意味で、このQ&A集を見ておきたいと思います。

<Q&A集ドラフト>
Q1:企業は、全ての製品についてHBELs(Health Based Exposure Limits: 衛生に基づく曝露限度)を制定しないといけないのか?
A1:はい、HBELsは、全ての製品について制定すべきである。非常に危険な製品のHBELsは、EMAガイドライン(EMA/CHMP/CVMP/SWP/169430/2012)の通りに、またはそれと同等に、完成されていることが期待される。非常に危険とみなされる製品/有効成分に関してはQ2を見よ。非常に危険なカテゴリには入らない製品は、Q4に書かれている。
 
Q2:どの製品/有効成分が非常に危険とみなされるか?
A2:非常に危険な製品は、低用量で重大な副作用を起こす可能性があり、安全なHBELを得るために、十分な毒物学的評価が有効である。
非常に危険な製品は、固有の毒物学的・薬学的な特性に基づいて識別され、以下のグループがある。
(このリストは、包括的なリストではなく、もし他の作用により低用量で副作用を起こすことを示すエビデンスがあるならば、その製品は非常に危険とみなされるべきである。)
製造業者は、下記のガイダンスに対する安全評価を経て、製品/有効成分が非常に危険かどうかを検討するべきである。製品または有効成分が下記のいずれかのカテゴリに入ることを示すエビデンスがあれば、製品が非常に危険であるとする結果にすべきである。もし確信が持てない時は、製造業者はその製品が潜在的に非常に危険であるとみなし、安全なHBELを得るためにEMAガイドラインを完全に適用すべきである。
1.人に対し発がん性があると知られている、または、高度に発がん性があると思われる遺伝毒性(特に突然変異誘発性)のある化合物
このグループの化合物は、遺伝毒性が薬学と関連(例えば、DNAアルキル化細胞活動抑止剤)し、製品概要に警告文があり、その使用が、通常は腫瘍の症状に限定されているため、容易に識別可能である。
2.低用量で生殖毒性または/及び発達上の影響を起こし得る化合物(例えば、臨床用量<10mg/日(獣医用の用量で0.2mg/kg/日相当)または動物実験における用量 <=1mg/kg/日でそれらの影響を起こすエビデンスがあるもの)
3.低用量で標的器官に重大な毒性またはその他の重大な副作用を生み出し得る化合物(例えば、臨床用量<10mg/日(獣医用の用量で0.2mg/kg/日相当)または動物実験における用量 <=1mg/kg/日でそれらの影響を起こすエビデンスがあるもの)
4.高い薬学的効能を持つ化合物 すなわち、推奨1日用量<1mg(獣医用の用量で0.02mg/kg相当)
5.高い感作性の可能性を持つ化合物
 
Q3.非常に危険かどうかを判断するための製品評価の裏付けのために、OELs (Occupational Exposure Limits:職業曝露限度)やOBLs (Occupational Exposure Bands:職業曝露帯域)を使用することができるか?
A3:はい。OELまたはOEB(帯域の下限)の仮許可された一日曝露量への外挿は、次の式を使うことによってシンプルになりうる。
PDE(μg/日)=OEL(μg/m3)×10m3(8時間に作業者により吸われる空気容量)
目標母集団の潜在的な違い(作業者対患者)、曝露の経路等により、追加の調整係数が必要になるかもしれない。もし、結果のPDE値が10μg/日またはそれより低い場合、その製品は非常に危険であるとみなされるべきである。
 
Q4:HBELの計算は臨床データのみに基づくことができるか?(例:最小治療用量の1/1000においてHBELを制定する)
A4:臨床の安全性プロフィールの基礎がしっかりし、非常に危険なカテゴリ(Q2の回答参照)に属さない多くの既存の市販品や新製品には、有益な治療上の指標がある。治療用量を超えた時点で、好ましくない、または健康への悪影響が起こるかもしれない。その結果として、薬理活性がもっともよく反応する/重篤な影響になりうる。
この場合は、治療用量の情報は、HBEL(例:PDE)の計算の開始点として用いることができる。これらの状況下で、最小治療用量の1/1000のアプローチに基づくHBELは、十分に保守的で、リスクアセスメントや洗浄目標に利用できうる。
 
Q5:衛生に基づく限界を決定するためにLD50(Lethal dose 50%:半数致死量)を使用することは許容されるか?
A5:いいえ。LD50は、HBELを決定するための開始点として適切でない。

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