ある監査員の憂鬱【第5回】
QAにも現場はある
本稿はフィクションを含みます。実在の地名、人物や団体などとは関係ありません。でも、監査経験の浅い皆様の不安を和らげたい、お役に立ちたい気持ちと、お伝えしたい情報に偽りはありません。
QAをやっていると上の立場の方(今で言えば経営陣でしょうか)などから、二言目にはこう言われることがありませんか?
「QAは現場を知らない」
私は、かつて三段階上の上司からそう言われましたし、直上司からは日常茶飯事でした。なにせ研究から回されて来たので、GMPが何かも分からない状態でしたから。
上司からは現場に行けと言われて、バイアル洗浄室に入ったものの、ただ四角い箱が並んでいるだけで、大きな水の噴射音と硝子のカチャカチャ鳴る無機質な音だけが今でも記憶に残っています。頭の中が空っぽなら現場に行っても記憶には残らず、結局は逸脱が起きても右往左往するだけでしたね。
私を救ったのは当時改正されたバリデーション基準でしょうか。重要工程というものがあるのか、ここを中心に検証するのか、重要工程の検証にはある程度決まった型があるのか…。頭で理解するのは1ヶ月もかからなかったでしょう。しかし、何かが違う。頭で分かることと体で解ることに大きな乖離がある違和感を思いながらQAの仕事を続け2年、海外の委託にバリデーションレポートを書く機会を経て、ようやく体で理解した瞬間を得ました。これぞ体得と言うやつですね。それから、現場が書いたバリデーション報告書を見て、危ないものに対して体がゾワゾワする感覚が生まれました。また、不思議とあの時の洗浄室に向かうと四角い箱たちが透けて見えるようになったものです。ああ、あの中で今、あれがああなってああ動いているのか、といったふうに。
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