安全キャビネットのホルムアルデヒド燻蒸に代わる安全な選択肢 ~蒸気化過酢酸除染の実力~

記事投稿:ニッタ株式会社 【PR記事】 (2025.7.1 更新)

安全キャビネットのホルムアルデヒド燻蒸に代わる安全な選択肢
~蒸気化過酢酸除染の実力~

 

2022年8月に欧州GMP、同年9月にPIC/S GMPから発行されたAnnex 1の改訂版は、無菌医薬品製造における微生物制御の考え方を大きく進化させました。特に注目されるのが、消毒・除染に関する規定の強化です。
改定Annex 1では、Contamination Control Strategy(CCS)の策定が義務化され、消毒・除染もその一環として位置づけられました。第十八改正日本薬局方の参考情報「消毒法及び除染法」では、無菌医薬品製造所等における除染の方法として、化学薬剤を気化または噴霧し、微生物数を設定レベルまで低減させる手法が紹介されています。
化学薬剤として、過酢酸を用いた除染方法が記されています。
PIC/s GMP Annex1及び第十八改正日本薬局方 参考情報には、人体に対する安全性が求められ、ホルムアルデヒド燻蒸に代わる安全、迅速、確実な除染方法が求められています。
本稿では、殺芽胞剤である過酢酸系除染剤に関する最新動向と新たに開発した蒸気化過酢酸(VPA:Vaporized Peracetic Acid)を用いた除染に関して報告します。
 

<過酢酸製剤の細胞芽胞に対する作用機構>
過酢酸製剤の芽胞に対する作用機構として芽胞内膜への作用が示唆されているが、損傷芽胞の発生とその評価解析は行われてきませんでした。近年、大阪公立大学のグループが過酢酸製剤の枯草菌芽胞に与える影響を研究報告しています。報告によると、過酢酸処理は、芽胞の最外層にあるタンパク質を主成分とする芽胞殻に阻まれつつも一部は浸透して芽胞内膜へ作用しているのではないかと示唆されます1)。また、過酢酸製剤は特に発芽の誘導に関わる発芽レセプター(GerK)や発芽過程で作動し、皮層を分解する酵素(CwlJ)と言った発芽システムへ損傷を与える可能性があり、この損傷が芽胞の生存に影響を与えると示唆されます2)。また、蒸気化過酢酸(VPA)が芽胞の内膜を透過してコア内に侵入し、DNAに影響を与える可能性を示唆されます3),4)
1) 福田ら:日本農芸化学会2022年度 大会、3A01
2) 福田ら:日本防菌防黴学会第49回 年次大会、1P-Cp23
3) 湯川ら:日本農芸化学会2024年度 大会、 3E6p12
4) 湯川ら:日本防菌防黴学会第51回 年次大会、 2P-Ca36
 
<過酢酸製剤の細胞への影響調査>
過酢酸製剤を用いたバイオセーフティキャビネット(BSC)除染後の環境が間葉系間質細胞(MSC:Mesenchymal Stem Cell)細胞への影響について、大阪大学のグループが研究を行い報告されています。5), 6)
BSC内を蒸気化過酢酸除染を行いて除染を行い、作業を開始するタイミングでBSC内の環境にMSCを一定時間暴露し、培養細胞の挙動の確認を行いました。
BSC除染直後の環境にMSCを暴露させるというワーストケースでも生細胞数への影響は少なく、蒸気化過酢酸によるBSC除染は、MSC細胞への影響が少ない除染方法であると示唆されます。
5) 辻本ら:第23回日本再生医療学会総会、 P-32-2
6) 高橋ら:第23回日本再生医療学会総会、 P-15-2
 
 
<蒸気化過酢酸(VPA)とは?>
安全キャビネットに搭載されているHEPAフィルタは、微生物及びウイルスを捕集役割があり、そのため、一般的にHEPAフィルタの除染を行う際は、透過性の良いホルムアルデヒドや二酸化塩素ガスなどのガス燻蒸がよく用いられます。
ガスはHEPAフィルタに捕集されず通過できるため、非常に有効な除染方法でした。
一方、既存の超音波発生器等を用いたミスト式過酢酸除染では、バイオセーフティキャビネットの除染などのHEPAフィルタを含めた除染を行う場合、HEPAフィルタにミストがトラップされて薬剤の除染効率が悪くなることや、HEPAフィルタが除染薬剤で濡れて劣化等の悪影響が考えられます。
そこで我々は、殺芽胞剤である過酢酸を蒸気化し、空間や設備を除染する蒸気化過酢酸除染「VPA(Vaporized Peracetic Acid)」を開発し、さらにニッタはこの技術を用いて、安全キャビネットのHEPAフィルタまで除染可能な装置「VPASS」を開発しました。
 

<安全キャビネットの除染に変化>
ホルムアルデヒド燻蒸の代替に!ニッタの新技術「蒸気化過酢酸除染」
医薬品製造現場や再生医療等製品の製造において、安全キャビネットの除染は極めて重要です。
長年使用されてきたホルムアルデヒド燻蒸は、発がん性や残留毒性の懸念から代替法のニーズが高まっています。
そこで注目されているのが、ニッタ株式会社が開発した「蒸気化過酢酸除染(VPA)」です。
 
<VPASSの特長>
1.    安全性:低濃度の過酢酸を使用し、人体への影響が少ない。
2.    有効性:指標菌を6log以上減少させる高い除染効果。
3.    迅速性:準備から片付けまで約半日で完了。
4.    腐食リスク低減:湿度管理により金属腐食を抑制。
5.    屋外排気不要:除染薬剤はケミカルフィルタで吸着・分解するため、排気設備が不要。
 
【写真】
 
 
バイオ除染対象:ESCO社 ESC-AC2-6N7

 

■安全キャビネットの除染方法の比較
 

過酢酸除染

ホルマリン除染

二酸化塩素除染

過酸化水素除染

薬剤濃度(目安除染時間)
SAL6レベル

約30ppm
(2~3時間)
600~1200 ppm
(12時間)
約1000ppm
(1~2時間)
約200ppm
(6時間)

分解速度

大気中で徐々に分解 非常に遅い
(生分解)
紫外線で容易に分解 大気中で徐々に分解

分解生成物

酢酸、酸素、水

塩素酸、塩酸 酸素、水

 

<実証試験とJIS準拠>
VPASSは、以下の3社の安全キャビネットを対象に実証試験を実施しました。
各機種において3回ずつ除染を行い、6か所の測定ポイントでバイオロジカルインジケーター(BI)を用いて効果を検証。その結果、すべての試験で「除染成功」と判定されました。
この結果は、JIS K3800(2021)附属書Bに準拠した除染方法としての有効性を裏付けるものです。


※試験対象装置:
ESCO社 ESC-AC2-6N7、PHC社 MHE-181AB3-PJ、日本エアーテック社 BHC-1610HA2


全ての設置場所・検証において、除染有効となり、除染成功の判定となった。

〇:除染有効 一対のBIの両方が培養陰性または片方だけが培養陽性
×:除染無効 一対のBIが両方とも培養陽性
●除染成功:6対のBI測定箇所全てが除染有効の場合
●除染不成功:2か所以上が除染無効
●条件付き除染成功:1か所だけが除染無効

 

<安全キャビネットへのVPASSの影響>
いくつかの安全キャビネットのタイプで、20回以上の除染後でも腐食などの影響は認められず、装置の安全性と信頼性が裏付けられています。
 

【VPA除染装置で10回除染実施した後の写真】
■装置:ESCO社  ESC-AC2-6N7

 

 
■装置:日本エアーテック社  BHC-1610HA2
 
 
 
 
<VPASS除染作業の流れと所要時間>
VPASSを用いた除染作業は、半日程度で完了します。
■搬入
除染装置を作業現場に搬入します。
■組立(約15分)
除染装置のユニットを設置し、必要な接続や準備を行います。
■養生(約15分)
除染対象の安全キャビネットを適切に養生し、過酢酸蒸気が効率よく循環するように準備します。
■バイオ除染(約120〜180分)
過酢酸蒸気を循環させて、キャビネット内部の微生物を除染します。HEPAフィルタを含む除染対象の内部空間全体に対して効果的な除染が行われます。
■ガス除去(約30分)
除染終了後、発生した除染薬剤の成分をケミカルフィルタで分解・除去されます。屋外排気は不要です。
■片付け(約15分)
装置の撤収と現場の復旧を行い、作業完了となります。
 
<まとめ>
ニッタが開発した蒸気過酢酸除染システム「VPASS(ヴイバス)」は、ホルムアルデヒド燻蒸の代替法として安全キャビネットの除染作業に使用できるシステムで多くのメリットがあります。
また、2023年8月に改訂されたPIC/S GMP Annex1では、殺芽胞剤の定期使用や無菌性の保証が求められています。
VPASSはこれらの要件にも対応しており、グローバル基準に適合した除染装置であり、医薬品製造現場で作業者の安全性と製品への影響を最小限に抑えつつ、確実な除染効果を得られます。
過酢酸は安全性・効果・環境負荷のバランスに優れた薬剤として、今後の主流となる可能性を秘めています。

● JIS K3800 2021 「附属書B 除染及び除染方法の評価 B.2 除染方法の評価」に準拠可能   
● PIC/S GMP準拠の殺芽胞剤使用
● HEPA/ULPAフィルタを含めた安全キャビネット内部のバイオ除染可能
● 迅速性   簡易養生で除染可能(準備~片付けを約半日で実施可能)
● 安全性 低濃度VPAでの除染 同室で製造作業可能
● 屋外排気不要(薬剤の吸着・除去)※ニッタオリジナルフィルタ
● 腐食リスクの低減(低薬剤濃度、湿度調整)

 
<最後に>
蒸気化過酢酸除染システム「VPASS」の一体型にした全自動のVPASSを下の展示会で展示しております。
よろしければ、弊社ブースに来場いただき現物をご覧ください。
 

 
【事業内容紹介】
ニッタ株式会社クリーンエンジニアリング事業部では、インダストリアルクリーンルーム(ICR)やバイオクリーンルーム(BCR)の環境を生み出す空調用フィルタの製造、浮遊微粒子・浮遊微生物等の環境モニタリングシステムの構築、過酢酸を用いたバイオ除染の要素を組み合わせることで、無菌環境構築・維持管理におけるトータルソリューションの提供を行っています。
ぜひ、本記事をきっかけに、現場の運用にお役立ていただければ幸いです。
 
医療製薬向けクリーンソリューション

<本件に関するご連絡先>
ニッタ株式会社
クリーンエンジニアリング事業部 
ライフサイエンス営業課


【展示会情報】
この度、東京ビッグサイトにて、インターフェックスWeek/再生医療EXPOに出展します。
ご紹介ページはこちら

◆ 会期:7/9(水)~11(金) 10:00 - 17:00 
◆ 会場:東京ビッグサイト 
◆ 弊社ブース:S5-1(南ホール4F)

「CCSの悩み、ブースで解決しませんか?」
エアフィルタ・パーティクルカウンタ・除染製品を展示中。
清浄空気と清浄度管理のソリューション、ここにございます。
ぜひ当社ブースへお立ち寄りください!
 

なお、新しい蒸気化過酢酸除染システム「 」も展示予定です。
ぜひ、お楽しみに!!

 


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